アパレル、国内生産へ回帰

日本アパレルの国内生産が増える傾向にあるようです。1970年代以降、商品のコスト(材料費や人件費)を抑えるために、縫製の海外移転が拡大してきました。海外縫製によって見かけの商品コストは下がりましたが、単品大量生産とリードタイムの長期化によって、商品の同質化、過剰在庫、低価格販売、売れ残り品の廃棄などの問題を招き、アパレル企業の業績悪化の要因ともなっています。商品によっては、需要に見合った数量を短納期で国内生産し、タイムリーに市場に供給することで商品価値を高め、ロスを削減することが可能でしょう。また、縫製技術の継承も大切なポイントだと思います。

2021年12月14日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

”ワールドやTSIホールディングスなどアパレル大手が国内への生産回帰を進める。円安や現地の人件費上昇で海外コスト負担が増している。新型コロナウイルス禍で物流混乱も収束が見えず、国内生産を増やして安定的に商品を調達できるようにする。中国や東南アジア中心のアパレル調達網に変化が出てきた。”

ワールドは百貨店などで販売する高価格帯商品で約4割を国内で生産しているが、3~5年で大半を国内生産にする。ジャケットやワンピース、ニットを中心に中国やベトナムから順次、国内に移している。ワールド全体の国内生産比率は足元の2割から3割以上に高まる見通しだ。

TSI:山形県米沢市の縫製工場

TSIは山形県米沢市や宮崎県都城市の自社工場で生産拡大を検討。自動化設備を活用し、ジャケットやコート、ブラウスなどを生産する。短納期で少量生産する実証実験などに取り組み、10%程度の国内生産比率を将来は3~5割に高めたいとしている。”

海外アパレル生産地での人件費推移

現状でも国内生産は海外と比べてもコストは高い。ただ注文から納品までの時間短縮などで廃棄ロスや機会損失を大幅に削減してコスト上昇を相殺できるとみる。日本の繊維産業は1970年代から生産の海外移転が進み、日本で販売される衣類は金額ベースで79%、数量ベースで98%が海外製。コロナ禍を契機に、中国やベトナムなど海外中心だったアパレルの生産拠点の配置も変わる可能性がある。”

一般的に衣類生産は大規模な設備が不要なため生産拠点を動かしやすい。世界で「ニアショアリング」と呼ばれる消費地に近い場所で生産する取り組みが海外アパレル企業の間で拡大している。米マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、38の国際的なブランドと小売業者の7割がニアショアリングを増やす計画という。”

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