号外:震災の教訓を次世代へ、阪神・淡路大震災27年の追悼

1995年1月17日午前5時46分に阪神・淡路大震災が発生しました。淡路島北部を震源とし、マグニチュード(M)7.3、神戸市などで震度7を観測しました。6434人の方が亡くなられ、4万3792人の方が負傷されました。家屋は約24万9千棟が全・半壊し、直接の死因の多くを窒息や圧死が占めるという悲惨な災害でした。あれから27年の月日が経過しました。震災の記憶や教訓を風化させることなく、次世代へ受け継いでいくことは、とても大切なことだと改めて思います。

2022年1月17日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

”6434人が亡くなった1995年の阪神・淡路大震災から17日で27年。神戸市など被災地の追悼行事は新型コロナウイルス感染症の影響で前年に続き、感染対策を徹底しての開催となった。戦後初の大都市直下型地震では都市の災害への弱さが露呈、耐震化など震災に強い街づくりは、なお途上だ。首都直下地震などが予想される中、防災・減災に向けた取り組みに終わりはなく、教訓の次世代への継承が課題となる。”

27回目の追悼集会

”地震発生時刻の午前5時46分、神戸市中央区の東遊園地では、「1・17」の形に並べられた竹灯籠の周りで遺族らが黙とうをささげた。2021年と同様に、新型コロナウイルス感染症対策として分散して来場してもらうため、灯籠は16日夕、一部に点火され「忘」の文字が夕闇に浮かび上がった。主催側によると、「忘れてはいけない」との思いだけでなく「忘れてしまう」「忘れてしまいたい」などの声も反映されている。”

”阪神・淡路大震災は、被害が著しく大きい被災自治体や被災者への特別な支援が必要と認められる「激甚災害」に指定。兵庫県の政治・経済の中心、神戸市で住宅やビルなど多くの建物が崩壊し、高速道路が倒壊するなどインフラが打撃を受けた。兵庫県によると、県内の被害総額は9兆9千億円、復興の総事業費は被害総額を大きく上回る16兆3千億円が投じられた。県や神戸市などは多額の地方債を発行して復興のための財源を調達。いまだに返済は終わっておらず、財政運営の重荷となってきた。”

”一方で、発生から四半世紀以上が経過して復興は進み、次世代医療の研究から実用化までを担う「神戸医療産業都市」が1998年に始動。人工島のポートアイランドに2021年11月時点で約380の研究所・病院・企業が立地し、再生医療などで地域産業への波及効果も出始めている。被災者の生活再建や産業再生を支援してきた公益財団法人「阪神・淡路大震災復興基金」の事業も2020年度末で終了した。神戸市では中心部・三宮の再整備が進みだすなど、街のにぎわいや魅力の創出に軸足が移りつつある。

”災害時に延焼の危険や避難の困難が予想される住宅密集地の解消は課題だ。震災では神戸市長田区の木造住宅密集地域などで火災が発生して約7000棟が焼失し、国や自治体では建て替え促進策などを強化した。国は2012年に避難が特に難しい「著しく危険な密集市街地」を初めて公表。神戸市では約255ヘクタールが指定されたが、2020年度末でなお約190ヘクタールが残る。地権者の高齢化などで建て替えや住み替えが進んでいないという。全国でも約2200ヘクタールが残っており、国交省の担当者は「最低限の安全を確保できていない状況で、早急に対策が必要だ」と危機感を募らせる。”

遺族や被災者らの高齢化が進む中、懸念されるのは記憶の風化と教訓の継承の難しさだ。兵庫県内にある「災害復興住宅」で入居者に占める65歳以上の割合(高齢化率)は5割超(2021年時点)と過去最多になっている。復興庁によると、東日本大震災の被災3県でも2018年3月末時点で高齢化率は約4割。いずれも誰にも看取られずに亡くなる「孤独死」が課題として浮かび、コミュニティづくりが求められる。”

震災犠牲者の名前が刻まれた銘板

”新型コロナウイルス感染症は教訓の継承にも影響を与えている。神戸市の市民団体「市民による追悼行事を考える会」によると、阪神・淡路大震災でも兵庫県内の追悼行事は2015年には110件あったが、それ以降は担当者の高齢化や資金難でほぼ半減した。東北の被災3県では、震災遺構などを訪れる人が減少。津波で浸水した高校の旧校舎を整備した宮城県気仙沼市の「東日本大震災遺構・伝承館」では団体客のキャンセルなどが相次ぎ、2021年度の来場者は12月末時点で2019年度の半分に届かない。今後は学校での防災教育の充実など、次世代へ教訓を受け継いでいくことが欠かせない。追悼行事の中止や規模の縮小は両被災地共通の課題として重くのしかかる。

倒壊した阪神高速道路

”震災を踏まえた防災・減災のノウハウは海外にも発信。国際協力機構関西センター(JICA関西)によると、海外の自治体関係者らを対象とした建造物の耐震化やハザードマップの作製、避難訓練の方法などを幅広く学ぶ内容の「防災研修」には、これまで計約120ヶ国・地域から受け入れてきた。コロナ禍で入国が難しくなったため、2020年秋からはオンライン研修を本格的に始めた。日本列島では2021年7月の集中豪雨で、静岡県熱海市で土石流が発生し26人が死亡したほか、海外では同8月にカリブ海のハイチで巨大地震が発生し、2000人以上が死亡するなど、国内外で大規模災害は今なお頻発している。防災・減災への取り組みは日本だけではなく、国際社会の共通の課題と言える。

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