号外:「脱プラスティック」ということ

プラスティックには色々な種類があり、性能が安定していて安価で、成形性の良い非常に便利な素材です。現在の私たちの生活で幅広く使われています。しかし、性能が安定しているがゆえに、廃棄されたプラスティック製品が環境に流出すると、長期間残留して環境を汚染し、ひいては人間を含めた生物の健康に悪影響を与えることが懸念されています。使用されたプラスティック製品をすべて回収・再利用することができればいいのですが、それもなかなか難しく、プラスティック製品の使用そのものを抑制する必要があります。先ずは「使い捨てプラスティック製品」の削減が進められていて、身近なところでは、レジ袋の有料化や、外食チェーンでのプラスティック・ストローの廃止などが実施されています。プラスティックが非常に便利な素材であるだけに、「脱プラスティック」は簡単ではありません。

2022年1月18日付け日経ビジネス電子版に掲載された記事より、

海洋汚染の原因となる使い捨てプラスティック製品の利用を制限しようとする動きがある。すでに世界の海には1億5000万トンものプラスティックごみが存在し、そこへ年間800万トン以上が新たに流入しているとされる。この海洋プラスティックごみは、マイクロプラスティックと呼ばれる大きさ5ミリメートル以下の粒子となって生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されており、世界で脱プラスティックの動きが加速している。”

2018年6月の主要7ヶ国首脳会議(G7)でプラスティックごみ削減の数値目標を盛り込んだ「海洋プラスティック憲章」がまとめられ、欧州連合(EU)を筆頭に各国で具体的な取り組みが進められている。日本は米国とともにこの憲章への署名を見合わせたが、2019年6月に大阪で開かれた主要20ヶ国・地域首脳会議(G20サミット)で、2050年までに海洋プラスティックごみによる新たな汚染をゼロにする目標を共有。2030年までに使い捨てプラスティックの排出量を累積で25%削減することを目指す「プラスティック資源循環戦略」を策定し、2020年7月にレジ袋有料化を開始した。2022年4月には、小売店や飲食店に使い捨てのストローやスプーンなどの使用削減を義務付け、有料化や代替素材への転換を求める新法の施行を予定している。”

”こうした流れを受け、国内でもプラスティック製ストローを廃止する外食チェーンや、ラベルレスのペットボトル飲料を販売する飲料メーカーなどが増加。化石燃料由来のプラスティックの代替品として、包材などを生物由来のバイオマスプラスティックや、微生物によって分解される生分解性プラスティックへ切り替える企業も増えている。

サステイナビリティを考える時には、私たち消費者が「少しの不便は我慢して、環境に配慮する」ことを考える必要があると思います。例えばペットボトルですが、日本はペットボトルリサイクルの先進国です。日本のリサイクル率は85%で、これに対して欧州は40%、アメリカは20%程度と言われています(PETボトルリサイクル推進協議会資料)。回収されたPETボトルは、PETボトル、ポリエステル繊維、食品トレイ、不織布断熱材や吸音材などとして再利用されています。しかし、このリサイクル(再利用)プロセスでもエネルギーが消費されています。飲料の容器として、規格化されたビンを使用すれば、洗浄するだけで再利用できます。ビン入り飲料は重くて持ち運びも大変ですが、昔はみんなそうしていました。飲料容器としてビンを使用すれば、プラスティック使用量を削減できますし、リサイクルのためのエネルギーも削減できます。ちょっと極端な例かもしれませんが、環境に配慮するということは、多少の不便には我慢して対応するということも含まれるのだと思います。

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