クラボウ、SDGsで変革

繊維産業がサステイナブルに事業変革を目指す場合の事例です。それぞれの企業が、それぞれの実情に合わせて、現実的な取り組みを進めることが大切だと思います。また各企業が1社でできることには限度があります。同じような方向性を持ったパートナー企業と連携することができれば、自社以外のサプライチェーンに働きかけることも可能になります。理想を追求するあまり実務で行き詰まって、中途半端な取り組みに終わってしまうのは残念なことです。

2022年1月29日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

”2021年11月、クラボウは東京・表参道で展示会を開催した。2020年に戦略的パートナーシップ契約を結んだ伊藤忠商事との共同開催だった。両社が協業する目玉の一つはSDGs(持続可能な開発目標)への対応だ。伊藤忠の再生素材でクラボウが人口羽毛をつくり、伊藤忠グループであるデサントのブランドで販売するダウンジャケットの開発が進む。こうした取り組みを広げる方針だ。

繊維業界でSDGsに対する関心はかつてなく高い。アパレル世界大手でスウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)が新疆ウイグル自治区の人権問題に懸念を表明。同社は衣料品のリサイクルにも積極的で、環境負荷の軽減も大きなテーマだ。クラボウも最近、取引先から工場の環境対策について聞き取りがある。新興国の取引先から環境費配慮した商品の問い合わせが増えた。これまでの価格競争とは少し違うと理解している。”

”同社は1888年、倉敷紡績所として岡山県倉敷市で創立した。レーヨンの生産会社としてクラレを生み出し、著名な西洋美術館である大原美術館を倉敷市に設けた名門企業だ。しかしこのところの業績は伸び悩んでおり、コロナ禍で2021年3月期の純利益は前期比41%減の22億円と苦戦した。SDGsを商機にしたい考えだ。SDGsの対応にはサプライチェーン全体に目配りする必要があり、メーカー1社でできることは限られる。このため国内外で幅広いネットワークを持つ伊藤忠との連携を選んだ。同社はアルマーニを日本市場に導入するなど伝統的に繊維事業に強い。”

クラボウは伊藤忠子会社のエドウィン(東京・品川)と店頭でデニムを回収し、糸などに戻して再利用する取り組みもスタートする。先行して2019年からエドウィンのデニム生産時に出る端切れをクラボウの工場で糸などに戻し、再利用することを始めていた。この取り組みを一歩進める。”

クラボウは愛媛県のタオル工場からでる端切れを集めて糸をつくり奈良県の靴下工場に卸す事業も始めた。ゆくゆくは全国の繊維産地をネットワーク化する計画で、伊藤忠の力を借りて関連商品の販売増を目指す。”

クラボウ、今治タオルの端切れが「奈良靴下」に>の項を参照

日本総合研究所によると国内で1年間に新規供給される衣料品は年82万トンあり、このうち6割が廃棄される。原料調達から製造までの過程で約4万5000トンの端材も出る。廃棄ロスは業界の課題だ。住江織物はオフィスビルのカーペットを回収して裏地を粉末状にし、裏地の原料に再生する。従来は埋め立て処分していた。一般的なカーペットから置き換え、2022年5月期からの10年間でCO2排出量を約22万トン減らす方針だ。脱炭素対応を入居者にアピールするオフィスビルが増えている。同社は「競争は激化しているが、再生材の比率の高さや従来品とコストが変わらない点が強みだ」としている。”

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