号外:4月からプラスティック新法施行

ワンウェイプラスティック(使い捨てプラスティック)について国は「プラスティック資源循環戦略」の中で、2030年までに累積で25%の排出を抑制する目標を示しています。これに関連して、プラスティックごみの削減やリサイクル強化に向けた、いわゆる「プラスティック新法」(プラスティックに係る資源循環の促進等に関する法律)が4月から施行されました。この中で注目されているものの一つが、小売店や飲食店などで無料で提供されている使い捨てスプーンやフォークなどのカトラリーの取扱いです。

2022年1月27日付けSustainable Brands Japanに掲載された記事より、

”新法は、プラスティックを使用する製品の設計から廃棄物処理に至るライフサイクル全般での3R(リデュース・リユース・リサイクル)+ Renewable(再生可能)を促進し、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行を加速する法律だ。

使い捨てプラスティック・カトラリー

”商品の販売やサービスに付随して無償で提供される使い捨てプラスティックに関して、スプーンとフォークのほか、テーブルナイフ、マドラー、飲料用ストロー、ヘアブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ、歯ブラシ、衣料用ハンガー、衣類用のカバーの12品目を「特定プラスティック使用製品」と定める。その上で、これらの年間使用量が5トン以上の事業者に、消費者が受け取るかどうかの意思確認と、受け取る場合は有料化、さらに受け取らない人へのポイント還元などの優遇措置、再利用の呼びかけ、あるいは軽量化や代替素材への切り替えを義務化する。有料化はあくまで選択肢の一つだ。

”そうした中、大手スーパーやコンビニからは現時点で4月からカトラリーをレジ袋のように有料化するといった動きは聞こえてこない。大手コンビニ3社の方針をまとめると以下の通り、軽量化や代替素材への切り替えが中心となりそうだ。

”2021年6~7月、環境省の実証実験の一環で、都内6店舗でカトラリーを辞退した客にnanacoポイントを3ポイント(3円分)付与する取り組みを行ったセブンイレブン。実験の結果は開示されていないが、現時点ではこうしたポイント還元のほか、既に沖縄県の店舗で実施している30%バイオマスを配合したカトラリーの提供を広げることも含め、あらゆる観点で対応を検討しているという。”

”一方、ファミリーマートは軽量化を進める方針で、スプーンについては既に持ち手の部分を穴の開いたデザインにして従来品より約12%プラスティック使用量を削減したものを全国の店舗で導入済みだ。フォークについても同じデザインで従来品よりプラスティック使用量を約8%削減したものを1月25日から関東と東海、甲信越の約8700店で提供し、今夏には全店に拡大する。これにより、スプーンとフォークを合わせたプラスティックの使用量を年間で約87トン削減できる見込みとしている。

穴あきスプーンとフォーク

”またローソンは2021年8月から都内のナチュラルローソンの一部店舗で開始した木製のスプーンを提供する実証実験を現在も継続している。現時点で新法に伴う大幅な切り替えなどは公表していないが、実証実験中の木製カトラリーを始め、様々な取り組みにチャレンジし、プラスティックの削減目標を達成していきたいとしている。”

”3社に限ったことではないが、共通するのは各社とも新法施行に関わらず、環境ビジョンにおいてプラウティック削減は重要なテーマであり、独自のKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)に基づいて削減を図っていることにある。その趨勢は大手スーパーも同じだ。”

イオンは2020年9月に策定した「プラスティック利用方針」の中で、脱炭素型かつ循環資源型の新たなライフサイクルの定着に向け、「事業活動における資源の無駄使いや使い捨て型の利用を見直し、使い捨てプラスティックゼロを目指す」「必要なプラスティックは化石由来から環境・社会へ配慮した素材へ転換する」「店舗を拠点に使用済みプラスティックの回収・再利用・再生する資源循環型モデルを構築し、お客様とともに持続可能な資源循環に取り組む」の3つを定める。”

”広報担当者によると「新法に合わせた動きとしては特にない」というが、カトラリーについても利用の有無の確認を徹底させるのはもちろん、事業会社単位でリサイクル素材のものを配布する実験を行うなど、素材の置き換えを中心に進めている。上記の方針の中で掲げた「2030年までに2018年度比で使い捨てプラスティックを半減させる」というグループ全体の目標に向け、一足飛びにはいかないものの、粛々と環境を整えているところだ。”

”一方、関東や近畿でスーパーのライフを285店舗展開するライフコーポレーションは4月以降、プラスティック製ストローを紙製に、スプーン(フォークを兼ねた先割れタイプのものと2種)を木製に順次、切り替える。広報担当者によると、いずれも必要な客が自ら持ち帰るセルフ方式で、スプーンは「FSC認証」を、ストローは「限りなく、認証を受けられるものと同じ素材」を使用。切り替えの開始時期は新法のスタートと重なったが、あくまで自社のプラスティック削減方針の一環で行うもので、これにより、年間約1700万本のプラスティック製スプーン・ストローの削減につながるという。

FSC認証材:Forest Stewardship Council(森林管理協議会)が適切な森林管理が実施されていると認証した材料

”もっとも有料化については「お客様の負担を考えるとやはり戸惑う」(ライフ)というように、新法を機に有料化に踏み切る方針を示すスーパーやコンビニは法施行まで3ヶ月を切った現時点で見当たらない(洋菓子など製造販売のシャトレーゼなど、既に使い捨てスプーンを1本2円といった価格で有料化している企業も一部にはある)。新法がスタートしたからといって、2020年7月のレジ袋有料化のように、スプーンやフォークといったワンウェイプラスティックに代表される「特定プラスティック使用製品」の有料化が一斉に始まることはないようだ。”

”「スプーンやフォークをお付けしますか」といった声掛けはコンビニやスーパーでは既に一般的であることからしても、消費者にとって目に見える生活の変化やインパクトにはつながらないかもしれないプラスティック新法。有料化がなされなくとも、スプーンやフォークを辞退する人は増えるのか。私たち一人ひとりの環境配慮意識が問われている。

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