号外:神戸港・姫路港、立地活かし脱炭素化

私は兵庫県西宮市に住んでいるので神戸港はすぐ近くです。兵庫県は、神戸港周辺と姫路港周辺で「カーボンニュートラルポート」(CNP)を目指す計画を進めます。これらの港の近くの住人にとって、CNPを実感できる機会が生まれるのかどうか良く分からない部分はあるのですが、身近な港が最先端技術を活用して環境負荷の低い港湾施設になるとすれば、ちょっといい気分です。

2022年8月22日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

液化水素を神戸空港島内へ運ぶ実証実験

”兵庫県の姫路港がある播磨臨海地域と神戸港周辺で、港湾全体で温暖化ガスの排出実質ゼロを目指す「カーボンニュートラルポート」(CNP)計画が動き出す。神戸は2022年度末、播磨については2023年夏ごろをめどに脱炭素化に向けた計画を策定する。これらの地域は関連産業が集積し、世界の最先端を走る水素活用も進む。国内でも優位性が高い立地を生かし、先進的なCNPを目指す。”

”兵庫県は7月末、姫路市から加古川市にかけての臨海部を対象に「播磨臨海地域カーボンニュートラルポート推進協議会」を立ち上げた。同地域に生産拠点を持つ神戸製鋼所、日本製鉄、川崎重工業や水素ステーションを持つ岩谷産業、国土交通省近畿地方整備局、姫路市などで組織した。2023年夏ごろまでに協議会を5回開き、計画を策定する。脱炭素化に向けた具体的な取り組みは今後詰めるが、第1回の協議会では発電施設で水素やアンモニアを燃料の一部として使ったり、クレーンなど港湾荷役機械を水素燃料電池化したりすることなどが例示された。

姫路港は全国有数の液化天然ガス(LNG)の貯蔵・発電基地が立地し、水素を燃料として使う際に既存の設備やノウハウを生かせるのが強みだ。大型タンカーが接岸可能で、水素の受け入れ拠点としてのポテンシャルも高い。製鉄所が立地することから、石炭の代わりに水素を用いる「水素還元製鉄」で水素の大規模な需要も見込める。企業も動き出している。岩谷産業は2021年4月、同社として県内2か所目の水素ステーションを姫路市内で開業し、燃料電池バスに供給している。東播磨港では三菱重工業が水素を燃料とするガスタービンの商用化に向け、水素の製造から発電まで一貫して検証するための実証設備「高砂水素パーク」を2023年度までに稼働させる予定だ。

製造業の生産拠点が集積する播磨臨海地域は全国屈指のものづくり拠点である一方、CO2の排出量が多い。県は「このエリアで脱炭素化を進めることは県全体のカーボンニュートラルの進展に大きく寄与する」とみる。神戸市は同市須磨地区から芦屋市にかけてCNPの対象範囲とし、脱炭素化進める。2023年度内に、停泊する内航船などに陸上から電力を供給する設備を設ける。停泊中はエンジンを停止させ、CO2の排出抑制につなげる。人工島のポートアイランドには2024年度内に大規模な水素ステーションを整備し、将来的には近隣のコンテナターミナルへの供給拠点としたい考えだ。

港湾荷役機械の電動化に向けた動きもある。神戸港でコンテナターミナルを運営する商船三井グループの商船港運(神戸市)は5月、大型リチウムイオン電池を搭載したコンテナ運搬用クレーンを導入。港湾物流大手の上組も将来的に水素燃料電池を搭載できるようにしたクレーンを年度内に神戸港に導入する。”

兵庫県の港湾での脱炭素計画

”神戸港周辺では、川崎重工業や岩谷産業らで構成する技術研究組合が2022年2月に、液化水素をオーストラリアから神戸空港島内に運ぶ実証実験に成功した。6月には運んだ水素を燃料に発電し、実験段階ながら「はこぶ」「ためる」「つかう」のサプライチェーン(供給網)を構築できることを世界で初めて示した。大阪港と瀬戸内の中間に位置する神戸港や姫路港で水素やアンモニアを輸入・貯蔵できれば、周辺港への供給拠点になる可能性もある。県内には水素の運搬や貯蔵に使うパイプライン、タンクの製造に欠かせない金属・ゴム加工を得意とする事業者も多い。水素活用が他地域に先駆けて進めば、県内企業にとって大きなビジネスチャンスになるとの期待は大きい。”

カーボンニュートラルポート(CNP)

CO2排出量が多い発電所や鉄鋼・化学メーカーが立地する港湾エリアの脱炭素化を目指す計画。国土交通省は国際戦略港湾、国際拠点港湾及び重要港湾の125港湾の管理者にCNPに向けた計画を策定するように求め、31港湾と2地域で計画策定に向けた検討が進んでいる。港湾を管理する自治体や臨海部に立地する企業と連携し、次世代エネルギーとして期待される水素や燃料アンモニアなどの受け入れ環境整備や港湾で使われる荷役機械の電動化などを通じて、港湾での脱炭素化を推進する。

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