号外:日本でも進む「食品ロス削減」②、3分の1ルール

食べられるのに捨てられる食品が多いのはなぜでしょうか?日本食品業界の独特な商習慣に「3分の1ルール」というものがあります。お聞きになったことがあるでしょうか?このルールには、安全でスムーズな食品供給と販売を担保する意味合いもあると思いますが、その反面、このルールによって大量の食品が廃棄されている現状もあります。食品廃棄を削減するためには、既存のルールを再考する必要があります。

2022年4月14日付けYahoo JAPAN SDGsに掲載された記事より、

”食品業界は「3分の1ルール」に縛られている。「賞味期限」までの期間を3分の1ずつ区切っていて、最初の3分の1までを「納品期限」、次の3分の1までを「販売期限」とする取り決めだ。この取り決めがあるために、「納品期限」や「販売期限」という節目までに納品・販売できなかった食品は、メーカーや卸、小売の段階で廃棄されてしまうものが多い。たとえば「賞味期限」が6ヶ月先の商品。製造後2ヶ月の「納品期限」までに卸業者が小売店に納品できなかった場合、商品は卸からメーカーに返品される。次に、もし小売店に納品されても製造後4ヶ月までに店舗で売れなかった場合、今度は「販売期限」を超過したとして小売から卸に返品される。いずれの場合でも、返品された商品は廃棄される可能性が高い。

食品業界の3分の1ルール

“そんな食品ロスを減らすため、2012年から農林水産省は「3分の1ルール」の見直しを推進している。大手スーパーチェーンではお菓子や飲料については「納品期限」が「賞味期限」の2分の1まで延びた。しかし、その他多くの商品は今なお3分の1ルールのままだ。ものによっては6分の1といった厳しい「納品期限」を課す小売店も存在すると指摘されている。他にも小売店が食品メーカーに欠品を許さず、欠品したら罰金を求める「欠品ペナルティー」、前日納品した商品の賞味期限より1日でも古いものを納入しない「日付後退品拒否」など、小売店に圧倒的に有利な商習慣があるという。

エコイート玉川店

“一方、賞味期限が長く、廃棄までに時間的余裕があれば、有効活用することも可能だ。大阪市のフードロス削減ショップ「エコイート玉川店」を訪ねた。平日の午後3時過ぎ、数人の客がいる店内。棚には、袋麵40円、缶コーヒー54円といった破格の安値商品が並ぶ。1袋200円のスナック菓子が50円弱など定価の4分の1のものもある。安い理由は、通常のスーパーなら置かないような商品が中心だから。同店を運営するのはNPO法人「日本もったいない食品センター」だ。数百点の商品のうち、賞味期限が「切れた」ものは2割ほどあり、残りは期限が迫っている。同店では、「期限を過ぎたら食べない方がいい『消費期限』と違って、『賞味期限』はおいしく食べられる期限。その期限を過ぎても食べられます。どれくらい過ぎても食べられるかは、材料、保存状態、包装などによってまちまち。私たち自身が味見をしたり、食品メーカーに尋ねたりして確かめて、安全かつ美味しく食べられると判断したものを提供しています」としている。”

「日本もったいない食品センター」が仕入れているのは、「賞味期限」が迫ったことで廃棄対象となった商品だ。メーカーや問屋などからいらなくなったものを引き取り、格安の料金で販売する。安全性の面から「消費期限」の商品は扱っていないという。その取り組みが口コミで広がり、食品メーカーや卸から「うちの商品も引き取ってほしい」という依頼が入るようになった。食品を保管し続けるのは大変で、廃棄するにしても費用がかかる。それらを「日本もったいない食品センター」が買い取ってくれるからだ。商品そのものに値段がつかない場合も運送費は「日本もったいない食品センター」側が出すので、メーカー側にはありがたい話だ。”

「もったいない食品センター」の倉庫

“また「賞味期限」食品を有効活用する活動は他にもある。福祉団体への食糧支援=寄贈だ。2015年、賞味期限まで1ヶ月以上あるお菓子を10トントラック1台分ほど引き取ることになった。仕入れ値は安かったが、余ってしまう可能性が高い。それならどこかに寄贈しようと、児童養護施設などに打診した。だが、各方面から断られた。賞味期限について理解を得られなかったためだ。どこなら寄贈できるのか。自社のスタッフに探してもらうと、いくつかの社会福祉協議会と関係ができ、複数の寄贈先を紹介してもらえるようになった。当初、よく寄贈したのはお菓子で、届けに行くと、お菓子をもらって目を輝かせている子どもたちを何人も見ることができた。

「最初は余っている食料を飢餓に苦しむ海外の国にどんどん送ればいいと単純に考えていました。でも、この日本で、都会の大阪でも満足に食べられない人たちがいる。食品を安く仕入れる力のある自分たちが、たまたま食料を必要とする人たちに出会った以上、何とかしなければならないと思いました」。NPO法人「日本もったいない食品センター」は、2019年4月に「エコイート玉川店」を開店した。その後、関西を中心に東京、高知、沖縄など現在までに9店舗を展開している。また、福祉施設や生活困窮者への支援も年々広げている。”

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