号外:COP27(第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議)②

11月6日から18日までエジプトで開催されているCOP27に関連する話題の続きです。

2022年11月7日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

COP27では、2030年までの温暖化ガス排出削減に関する作業計画の採択も目指している。先進国側の意図でCOP26の合意事項に盛り込まれたテーマだ。背景には足元の温暖化ガスの排出量が大きい中国と、人口増や経済発展とともに今後も排出の伸びが予想されるインドについて、先進国が排出削減目標を上積みするよう求めていることがある。先進国は既に排出量を減らし始めていて、世界全体の温暖化対策の命運は中印の動向にかかっているためだ。ただCOP27議長国のエジプト政府は、気候変動の被害に対して脆弱な途上国を含むアフリカ代表の立場。中国やインドは交渉の場で途上国サイドに立つため、両国に排出削減の追加の取り組みを引き出すことは難しい情勢とみられている。国際機関などの分析では、現状の各国の排出削減の取り組みではパリ協定の目標の1.5度以内に気温上昇を抑えることは困難とされる。2030年までの10年弱の間に各国が排出削減の取り組みを強化して、世界の排出量をできるだけ早く減らし始める必要がある。”

“議長国のエジプトはテーマ別の日替わりのプログラムとして①途上国への資金支援②気候科学の活用や若者の活動③脱炭素④気候変動への適応と農業⑤ジェンダー⑥エネルギーの脱炭素⑦生物多様性、などを設定している。有志の国や自治体、企業などが参加する新たなパートナーシップやイニシアティブが立ち上がる可能性がある。日本の環境省もジャパン・パビリオンを設置し、環境省が16日(日本時間)にパリ協定に基づく国際的な排出量取引制度のパートナーシップを立ち上げる予定だ。このほか大成建設がCO2を原料としたコンクリート、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が人工衛星を用いた温暖化ガス観測の取り組みなどを展示し、日本の技術をアピールする。”

化石燃料由来CO2排出量の地域別推移

ロシアによるウクライナ侵攻の影響がどう表れるかも注目点だ。侵攻後、ロシアも参加する20ヶ国・地域(G20)の閣僚級会合では、日本を含む西側先進国からロシアを非難する声が相次ぎ行動声明を採択できずに閉幕するケースが相次いでいる。11月15~16日にはインドネシアでG20首脳会議(サミット)が開催され、COP27の議論にも影響する可能性がある。COPでも最終的な合意文書のとりまとめができなければ史上初となる。”

エネルギー大国のロシアは石油の生産量で米国、サウジアラビアに次ぐ世界第3位、天然ガスでは米国に次ぐ2位を誇る。欧州や日本など脱炭素やエネルギーの安定供給でロシア産をあてにしていた国は急速な転換を迫られている。2020年の貿易統計では、日本は石油で4%、天然ガスは9%、石炭は11%をロシアに依存する。日本以上にロシアに依存するドイツやイタリアは、ロシア産の天然ガスを活用することで排出量の多い石炭火力の廃止を進めてきた。ロシア産のエネルギー資源の輸入を減らすために天然ガスの調達先を新たに開拓し、石炭火力の廃止時期を延期するなど、躍起になっている。”

気候変動とエネルギー不足

日本を含む各国が実施する化石燃料の価格を抑制するための補助金も、脱炭素に逆行するとの批判がる。もっとも、化石燃料価格が上昇する傾向はロシアのウクライナ侵攻以前の2020年から続いていた。世界的な脱炭素の潮流から、化石燃料などの資源開発は中長期的に細るとみられている。ロシア・ウクライナ問題の前から石油やガス、石炭の価格は今後上がることはあっても下がることはないとの見立てがあった。化石燃料の輸入価格が上がると、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーは導入コストが相対的に下がる。輸入する化石燃料を減らしてエネルギー自給率を高めることにもつながる。ウクライナ危機を受け、足元のエネルギー確保の重要性が高まり、欧州では一時的に石炭火力発電所の稼働が増え、戦時下で脱炭素の動きはゆるむ。再生可能エネルギーやガソリンを使わない電気自動車(EV)、エネルギー需要を減らす建物の断熱化をはじめ、COP27は脱炭素への動きに「ネジを巻く」会合になるとみられている。

Follow me!