号外:COP27閉幕、途上国支援基金創設で合意

COP27で気候変動による被害を受けた途上国を支援するための基金を創設することが合意されました。しかし具体的な制度設計などはこれからです。既に世界各地で気候変動による被害は顕在化しています。財政基盤が脆弱な途上国が大きな被害を受けた場合に、気候変動への責任がより重い先進各国が支援することは必要なことです。その一方で、肝心の温暖化ガス排出量の削減については、あまり目立った進展はなかったようです。

2022年11月20日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)は11月20日、気候災害で「損失と被害」を受けた途上国を支援する基金の創設を決め、閉幕した。温暖化対策の輪に途上国をつなぎとめたが、本丸の温暖化ガスの排出削減でめぼしい進展はなかった。気温上昇の加速に歯止めをかける踏み込んだ対策は課題として持ち越す。各国には2023年末までに排出削減目標を上積みするよう求めた。

COP27は干ばつや洪水など気候変動による「損失と被害」への対応を初めて中心的な議題にした。途上国が求めた基金の設置に先進国は慎重で調整が難航した。11月18日までの会期を延長し、20日朝に合意にこぎ着けた。議長を務めたエジプトのシュクリ外相は閉幕前の全体会合で「気候変動に脆弱な人々の期待に応える内容だ。各国の努力に感謝する」と述べた。国連気候変動枠組み条約のサイモン・スティル事務局長は「数十年にわたる議論を前進させる方法を決めた」と強調した。”

基金の基本的な枠組みを詰める委員会を12月に発足させる。先進国10ヶ国と途上国14ヶ国がメンバーで、途上国の意見をより反映しやすい体制になる見通しだ。資金の出し手に中国などの新興国を加えるかどうかが焦点となる。支援対象となる「脆弱な国」の線引きも今後の検討事項だ。1年後の2023年11~12月のCOP28での採択をめざす。基金創設でまとまり、先進国と途上国が決裂する事態は回避できた。しかし議論が「損失と被害」に集中したこともあり、肝心の温暖化対策の面で新たな成果は乏しい。

COP27合意文書のポイント

“成果文書は、1年前に英国で開いたCOP26で採択した「グラスゴー気候合意」の内容を改めて盛り込んだ。産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑える目標に向けた取り組みや、石炭火力の段階的削減などだ。ウクライナ危機で後退する懸念さえあったところで踏みとどまったともいえる。11月14日の米中首脳会談で両国が気候変動で協力すると合意したことが地ならしとなった。”

今回の合意は低排出電源と再生可能エネルギーの拡大を盛り込み、化石燃料からの雇用転換など「公正な移行」の重要性を訴えた。再生可能エネルギーに2030年までに4兆ドル規模の投資が必要との見方も示した。低排出電源の文言は交渉の最終盤に挿入した。何を指すかは明示していない。今後解釈が分かれそうだ。温暖化対策の国際枠組みパリ協定が掲げる1.5度目標の達成には、世界の排出量を2030年までに2010年比で45%減らす必要がある。現状では逆に10.6%増える見込みだ。2030年の排出量を2019年比で43% 減らす目標も示した。各国には2023年のCOP28までに削減量を再提出するよう求めた。”

焦点は世界の排出量の3分の2を占める新興国・途上国の対応だ。1.5度目標に沿う目標を出す確約はない。COP26の議長だった英国のシャルマ氏は「2025年までの排出ピークアウトも文章に入っていない。全化石燃料の段階的廃止もだ」と怒りをあらわにした。インドや欧州は段階的に削減する対象を石炭だけでなくすべての化石燃料に広げるよう主張していた。11月20日も会場で米国やEUが化石燃料の明記を迫った。結局、ロシアや中東諸国の反対で石炭のままにとどまった。COP27の合意は今後の温暖化対策の最低ラインだ。脱炭素のネジを巻きなおさなければ1.5度目標は遠のいていく。

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