「再生」、REconomy時代の到来

私たちの日常生活においても、変化は少しずつですが着実に進んでいます。これからますます広がっていく新しい経済の流れを、わかりやすく解説した記事です。身近なところから、環境負荷を少なくする「持続可能な生活」を試みてみましょう。私たちの年代より若者世代の方が、自然体で実践してくれているようです。

2022年11月16日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

中古品販売の「セカンドストリート」

古着のネット販売で急成長している米スレッドアップが公表したリポートがアパレル業界で波紋を呼んでいる。2026年に古着市場は10兆円規模に倍増し、2030年にH&MやZARA、急成長中のSHEINなどファストファッションの2倍を超えるという。あくまでスレッドアップの独自試算なので、客観的データとは言いがたい。それでも昨今の急拡大を受け、「ファストファッション何するものぞ」と言わんばかりに古着の勢いが増していることを物語る。もはや古着は新品の「お古」ではない。世界的にアパレルの一ジャンルとして地位を確立したことは間違いない。

「再生」経済、国内リユース市場
取引内訳と主要品目

原動力の一つは環境意識の高まりだ。とりわけ流行サイクルが早いファストファッションの巨大化は温暖化ガスの排出増を招く。1996~2012年生まれのZ世代はファッションに敏感であると同時に環境意識も高い。環境に優しくない業界、企業とみれば敬遠する傾向が強い。もう一つはデザインの多様性だ。ファストファッションは大量生産・消費型ゆえにパターン化した製品が目立つ。これに対して1980~90年代のファッションはとんがっていたり、派手だったり、実に個性的なデザインが多い。ファストファッションと対照的で、レアな掘り出し物には値が高くつく。自分を表現するお宝を探すという本来のファッションを体現している。

東京・下北沢。細い道路が入り組んだ狭い地域に今、180程度の古着店が軒を並べている。実は東京都町田市、神奈川県厚木市などに多かった古着店が、小田急電鉄の利便性アップなどを理由にここ4~5年で都心部に近い下北沢に移るケースが急増。古着の力を得て、若者の街としての魅力も一段とアップした。下北沢を中心に12店を展開するデザートスノー(東京・渋谷)は「フリマアプリの浸透や環境意識に加え、1990年代に流行した米国のヒップポップ系ファッションが注目を集めたのが古着人気のきっかけ」と話している。古着は国内で仕入れているのかと思いきや、同社では米国で仕入れた後にパキスタンなどで仕立て直す「輸入品」が売り上げの95%を占める。古着のグローバルサプライチェーンができあがっているわけだ。

かつて中古市場は自動車や骨とう品、美術品が代表的だったが、今やファッション、家電、雑貨などあらゆる分野で活気づく。レンタルビデオ大手だったゲオホールディングスの「セカンドストリート」は中古店にありがちな「暗い、近寄りがたい」といったマイナスイメージを払拭した店作りで成長し、国内800店近くに達している。確かに新品の販売店と見間違うような売り場で、来店客の過半数は女性という。

“中古品ブームと並行して広がっているのがレトロ消費だ。背景には様々な中古品流通に加え、膨大な情報量が若い世代の時間感覚を変えたことにある。SNS(交流サイト)などからひっきりなしに情報が入り込み、もはや何が新型、旧型なのか識別できない。古い話でも新たに発見したことが「ニュース」なのだ。1980年代のポップスをCM曲に起用したり、ウルトラマンやゴジラが「シン作」になったり、レトロコンテンツを今風に再編集するマーケティングは主流になった。

西武園ゆうえんちの「夕日の丘商店街」

リサイクル、リユース、レトロ。昨今の経済行為を英語にするとREが冠につく経済行動が多いことがわかる。環境問題やエネルギー・資源高を受けたCO2、資源とゴミの削減(Reduction)も同じだ。こうした再生型経済への移行が加速する今を一言で表現するなら、RE型経済すなわち「レコノミー」という言葉がしっくりくる。”

“ファーストリテイリングが運営するユニクロは服を補修・リメークするサービスを始め、伊藤忠商事は本格的に中古スマートフォンのネット販売を始めた。ヤマダホールディングス(旧ヤマダ電機)も中古家電に力を入れる。コンビニエンスストアではセブン-イレブン・ジャパンが太陽光発電の利用拡大や二重ガラスなどの活用で新型店のCO2排出量を半減する対策に乗り出し、ローソンが電力購入を4割減らす新店舗を開いた。かつては新機軸を打ち出すことを競い合ったが、今や「再生」が主役だ。

再生素材100%使用のペットボトル飲料

“モノや店だけではない。政府が5年で1兆円を投じることを表明したリスキリング(学びなおし)も同じ流れにある。デジタル化などを外部人材だけに頼るより、企業内のスキルを高めて、生産性を上がる方が手っ取り早い。人口減で新しい労働力が先細りするなか、企業への忠誠度が高い社員の再生(Reproduction)が競争力のカギを握る。昭和型の経済モデルは新製品の投入→陳腐化→マイナーチェンジ→需要回復→停滞→廃棄→新製品というプロセスで進んだ。しかし様々な分野で環境的な制約が強まり、市場の飽和状態も目立つと新製品依存の事業は行き詰った。今後は足元の資源、人材、知的財産を再構築する「お宝発掘」モデルに移行する。自己の利益を極大化する行動基準を持つホモ・エコノミクスから、全体の利益を優先するホモ・レコノミクスへ。その進化を遂げない限り、新しい資本主義は生まれない。”

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