号外:海流発電、黒潮の力を手中に(海洋国家日本の再生可能エネルギー)

日本全体のCO2排出量(2015年:1,227百万トン)のうち約4割を発電部門が占めています。同年の電源別発電量では、火力発電が84%でした。東日本大震災以降、原子力発電の割合は急激に低下し(2010年:原子力発電/29%、火力発電/62%)、火力発電の割合が上がっています。電力は重要なライフラインで、その安定供給は私たちの日々の生活に直結しています。日本全体でCO2排出量削減(サステイナビリティ)を考える時には再生可能エネルギーによる発電を増やしてゆくことが必要です。日本の再生可能エネルギーによる発電の代表格は水力発電ですが、これはダムの設置可能場所の制限があり、これ以上大きく増やすことは難しいと思います。

2019年9月5日朝日新聞掲載記事より。

“日本列島の太平洋側を流れる黒潮のエネルギーを電気に変える、海流発電の実用化に向けた1年間の実証実験が今秋から始まる。海流発電は季節や時間帯による変動が少なく、安定した電力源となることが期待されている。その一方で、発電に適した設置場所が限られ、海中の発電装置の保守管理に手間がかかり、実用化には発電コスト低減が課題となっている”

“実証実験は、年間を通して黒潮が流れる鹿児島県の口之島沖約10キロの海域で行われる。発電装置は海中に沈められ、海底の重りとロープでつながって水深30~50メートルを漂う。1年を通して運転することで、発電量の変化や装置の耐久性、海洋生物の付着具合などを確認する。”

発電能力のうち実際にどれだけ発電できるかの「設置利用率」は、太陽光約10%、地上の風力約20%、洋上風力30-40%に対し、海流は50-70%が見込めるという。今の技術で海流発電に使えそうな大きな海流は、世界にも黒潮か米フロリダ沖を流れるメキシコ湾流くらいと言われている。

日本近海の海流

今回の実験用発電機の最大出力は約100キロワットで、この規模では1キロワット時あたりのコストは100円以上になるとのことです。同じ再生エネルギー発電の比較では、大規模太陽光で24.2円、陸上風力で21.6円、一般水力が11.0円程度。ちなみに石炭火力は12.3円、原子力は10.1円程度と言われています。現状ではかなり高コストなのですが、先ずは出力2千キロワット級の実用機で40円を目指す計画です。技術課題を解決し、大規模化が進めば、将来の更なるコスト低減が期待されるとのことです。海流発電が今後5~10年で温室効果ガスの削減に大きく貢献することは難しそうですが、燃料を輸入に頼らない日本ならではの再生可能でサステイナブルなエネルギーによる発電の新たな選択肢として期待されています。

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