愛媛発「今治のホコリ」が大ヒット!①

ちょっとおもしろい話です。今治のタオルの染色メーカーで発生する綿ボコリ(廃棄物)がキャンプ用品に生まれ変わりました。身の回りで発見したアイディアと巧みなマーケティングの組み合わせでヒット商品が生まれました。

2023年3月13日付け日経クロストレンドに掲載された記事より、

「今治のホコリ(着火剤)」

日本有数のタオル産地、愛媛県今治市。その地名を冠した新商品が話題を呼んでいる。その名も「今治のホコリ(着火剤)」(以下、今治のホコリ)。タオルの染色工場で発生する綿ぼこりを活用した着火剤だ。これを使うとファイヤースターター(火打ち石)を使った火起こしが簡単にできる。ライターでの着火に比べてより非日常感を味わえるとキャンプ好きの間で話題に。2022年2月の発売以来、月間売り上げは当初の20倍以上に伸びている。”

「ここまでのヒットは予想外」と語るのは、同商品の生みの親で、自身もキャンパーでたき火愛好家だと語る西染工の福岡友也商品事業部長。廃材を活用するサステイナブルな商品は時流に合い、発売前からさぞ社内の期待値が高かったのかと思いきや、「期待値はまったくのゼロだった」(同)と打ち明ける。”

西染工は、創業70年の老舗染色会社。近隣のタオルメーカーの依頼を受け、タオルの染色を担ってきた。高温の染液に生地を浸し、機械乾燥して色を定着させる染色は、大量のエネルギー資源を必要とする産業。同社は約20年前から環境負荷を減らそうと取り組み、「配管を断熱材で覆う」「熱効率のいい機械を導入する」、などの省エネ策を取ってきた。商品開発の傍ら、代表の下、その推進役を担当してきたのが福岡氏だ。ただ「大規模な設備投資以外にできることはやり尽くした状態で、近年は手詰まり感が強まっていた」(同)という。”

地球環境保護につながる別の切り口はないか。目に留まったのが工場の片隅に置かれてきた袋詰めの綿ぼこりだった。染色したタオルを乾燥させると、乾燥機のフィルターには綿ぼこりが付着する。同社の場合、その量は1日当たり120リットルのごみ袋2つ分(240リットル)に及び、当然、廃棄費用も発生していた。綿ぼこりは、たまると電気系のショートなどで、工場火災を誘引する染色工場の”やっかいもの“。だが、その特徴から「ふと、その燃えやすさを生かし、着火剤をつくれないかと思いついた」(同)という。”

“キャンプでたき火をする際、ファイヤースターターで火を起こすには、火花を燃え移す「火口」が必要。同氏は趣味のキャンプでほぐした麻ひもを火口として使ってみたが、一度では着火しないことも多かったという。ところが試しに綿ぼこりを火口にすると、拍子抜けするほど簡単に着火できることが判明。検証を重ねると、10gの綿ぼこりがあれば、5分程度は燃焼し続けることも分かった。炭に着荷させる場合、着火剤は5分程度燃焼し続ける必要があるが、綿ぼこりはその条件もクリアしていた。”

綿ぼこりの着火の仕方

市販の着火剤には化石燃料が含まれ、見た目も黒や茶色など地味なものが大半。それに対して、今治タオルの染色時にでる綿ぼこりは綿100%で色もカラフル。さらに、本来は捨てるものを、そのまま生かせる。「従来品と差別化できるポイントが多く、『これはいける』と確信した」(同)。社内からは「『廃棄物を商品にするなんて』と大ブーイングを浴びた」が、綿ぼこりの優位性を考え商品化にこぎつけた。”

“ヒットの要因はいくつもある。まず工夫したのは容器だ。「高い染色技術の証明」である綿ぼこりのカラフルさを分かり易くアピールするため、透明なプラスティック製を選んだ。一方、綿ぼこりをどう詰めて商品にしたてるかは、商品事業部の20代の女性社員5人に一任したという。「50代男性である自分が詰めると、カラフルさを生かしきれずなぜか迷彩調になる(笑)。赤と白の綿ぼこりを”いちごミルク“に見立てるなど、かわいらしい色合いの試作品を苦も無く作る彼女たちを見て、『オジサンの出る幕ではない』と痛感。SNSを使った発信も任せることにした」(同)。”

2022年2月に発売すると、直後に地元の経済紙が商品を紹介。その後、ローカルテレビ局、アウトドア専門誌、さらには全国ネットのニュースでも取り上げられ、人気が過熱。自社のECサイトのほか、大手アウトドアショップでも販売がスタートするなど販路が拡大し、発売から1年が経過した今も、売り上げは右肩上がりに伸び続けているという。

石井スポーツのアウトドアコーナー

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