号外:米国の発電量、再生可能エネルギーが石炭を初めて抜く(2022年)

米国では脱炭素電源への移行が着実に進んでいます。広大な国土での大規模な風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーを拡大するとともに、シェール革命で手に入れた安価な天然ガス(今では米国は世界最大の天然ガス生産国です)を組み合わせています。『脱炭素経済にふさわしいエネルギー基盤を築きつつある』との評価もあります。一方で、平地が限られ、天然資源にも乏しい日本は、電力・エネルギーの安定供給において困難な課題に直面しています。参考に、日本の電源構成についての資料を文末に掲載します。

2023年3月28日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

“米国の発電量のうち再生可能エネルギーの比率が2022年、初めて石炭火力を年間で上回り、燃料別で天然ガスに次ぐ2番目となった。陸上風力や太陽光発電の導入が増えたほか、発電コストも低下して競争力が強まった。”

米エネルギー情報局(EIA)が3月27日に発表した。発電部門の電源構成で、戸建てや工場の屋根に設置された太陽光パネルなどは含まない。水力と太陽光、風力などの再生可能エネルギーの比率は発電量全体の2割強を占め、石炭火力(20%)を初めて上回った。多くの州で再生可能エネルギーの調達義務を定めているほか、連邦政府も免税措置で導入を推進している。風車を大量に置く「ウィンドファーム」や太陽光パネルを広大な敷地に並べる「メガソーラー」が相次いで立ち上がり、発電コストも安くなった。風力発電はテキサス州が州別で最大で、全米の26%を占めた。大型太陽光発電ではカリフォルニア州のシェアが全米最大の26%、テキサス州が16%で続いた。”

再生可能エネルギーの比率は2021年に原子力を初めて抜いた。2022年5月にミシガン州のパリセイズ原発が廃炉となったことで同年の原発比率は19%となり、2021年(20%)から縮小した。米国では老朽化した原発が多く、バイデン政権は延命に向けて補助金を投入する方針だ。一方、天然ガス火力は依然として増加している。シェール革命を経て米国は世界最大の天然ガス生産国になった。天然ガス比率は2022年に39%となり、2021年(37%)から拡大した。安価な天然ガスを燃料にした発電所の建設が相次いだためだ。再生可能エネルギーの発電量は天候に左右されるため、すぐに発電できる「バックアップ電源」としてガス火力の重要性は高まっている。”

石炭火力は高コスト体質や環境規制の強化で廃止が相次いでいる。2022年の石炭比率は20%となり、2021年(23%)から縮小した。EIAは2023年の再生可能エネルギーの比率が拡大し、石炭比率は縮小する傾向が続くとみている。”

<諸富徹:京都大学大学院経済学研究科教授>

石炭火力の劇的な減少が印象的。石炭から天然ガスと再生可能エネルギーへ、という米国のエネルギー構造の歴史的転換点だ。こうした傾向は今後、さらに加速される可能性が高い。昨夏に成立した「インフレ抑制法」は、米国の温室効果ガス排出を、現行の政策なら2030年に2005年比で約30%の温室効果ガス抑制となるところ、同年に約40%まで削減を拡大し、彼らの削減目標50~52%減に近づける効果を持つと見込まれている。シミュレーションによれば、この法律はこの先10年で再生可能エネルギー(とくに太陽光と風力)、そして電力系統投資を大幅に増加させる効果をもつ。米国はこれにより、脱炭素経済にふさわしいエネルギー基盤を築くことになるだろう。

日本の電源構成

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