号外:サンマ不良、沖合に移動が原因か

近年、本来は大衆魚として私たちの食卓に欠かせなかったサンマやイワシの漁獲高が減少し、店頭での価格も上昇しています。近所のスーパーでも、とても気軽には買えないような価格で販売されています。ここにも温暖化の影響がみられます。私たちが長年馴れ親しんできた味覚が、だんだん手に入りにくくなるとしたら、とても寂しいことです。

2023年4月17日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

サンマの水揚げ

“国立研究開発法人水産研究・教育機構は、サンマの深刻な不漁の原因についての調査結果を初めて取りまとめた。温暖化などで海洋環境が変化したことで、日本近海にサンマが回遊しにくくなったという。同機構は水揚げ回復への先行きに厳しい見方を示した。サンマの資源量が減っているとの見方もあり、政府は夏から始まるサンマ漁の漁獲枠を過去最少にする方向だ。調査によると、温暖化の進行などで千島列島から三陸沖に南下する寒流である親潮の流れが弱くなり、周辺海域の水温が上昇した。このためサンマが東の沖合に移動し、日本の近くまで回遊してこなくなったという。”

“産卵場所や稚魚の成育海域も沖合に移ったとみている。エサとなるプランクトンが少なく、サンマは大きく成長できない。従来は200グラムほどのサイズが多く漁獲されていたが、2022年シーズンは半分ほどの大きさのサンマが目立っていた。日本近海で競合種であるマイワシとサバ類が増加したため、サンマが回遊しにくくなった可能性も指摘した。西田水産資源研究センター長は「海洋環境において負の要素が重なっている。ひとつずつ改善しなくてはならない」と指摘した。

サンマの回遊変化

“全国さんま棒受網漁業協同組合によると、サンマの水揚げ量は2008年に34万3225トンを記録したが、2022年には1万7910トンにまで落ち込んだ。記録が残っている1061年以降で過去最少になったという。サンマ漁は8月ごろから始まる。北海道漁業管理課の担当者は「サンマは道内の主要な水産物なので危機感がある」と話す。漁業者の声を聞き、政府へ対策を要望していくという。水産庁は、燃料代がかかるため遠方まで獲りに行きづらいのではないかとみている。”

“不漁の要因を巡っては、サンマの資源量が減った影響との見方もある。水産庁は4月13日、2023年の日本のサンマ漁獲枠を前年比24%減の11万8131トンにする案を公表した。政府が自主的に漁獲枠を設定するようになった1997年以降で最少となる。月内に予定する水産政策審議会で正式に決まる見通しだが、近年のサンマの漁獲量は漁獲枠を大幅に下回っている。外国漁船による過剰漁獲が一因との見方もあるなか、日本や中国、台湾など9ヶ国・地域による北太平洋漁業委員会(NPFC)は3月に2023~24年も年間漁獲量を約25%減らすと合意した。ただ、大幅な削減に対して反対の声もある。野村哲郎農相は4月11日の閣議後会見で「日本も漁業者も困った状況なので、関係国と議論していかなければならない」と強調した。”

スーパー店頭では1匹100円だった安価な大衆魚が、2022年秋には300円を超えるようになった。食文化を守るためにも、さらなる実態把握と関係国・地域による協調が求められている。”

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