号外:英エネルギー安全保障相、洋上風力「インド太平洋に技術移転」

英国は世界でも有数の洋上風力発電大国です。下記の英国の電源構成(2022年)にもあるように風力発電は26.8%を占め、天然ガスと原子力を合わせて80%以上の電力を賄っています。日本の2030年度の電源構成目標では、大量のCO2を排出する石炭火力が19%残る計画で、各国の批判を受けています。また原子力発電の再拡大も課題です。いずれにしても、日本にとっては風力、特に浮体式洋上風力発電や、太陽光発電といった再生可能エネルギーの活用拡大が必須条件になります。EU離脱後、アジアへの接近姿勢を見せている英国との連携も、大きな可能性の一つだと思われます。

日本の電源構成目標(2030年度)

2023年4月17日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

“英国のシャップス・エネルギー安全保障・ネットゼロ相は同国が世界で先行する洋上風力発電に絡み、日本を含むインド太平洋地域に「(英国が培った)技術を移転するのは必然なことだ」と述べた。普及につながる制度づくりの支援にも意欲を示し、同地域の脱炭素やエネルギー源の多様化に関与する姿勢を強調した。都内で日本経済新聞の取材に応じた。シャップス氏は「インド太平洋地域の国々が洋上風力に参入することは(地域にとって)大きな利益をもたらす」と話した。輸入に頼らない自国産の再生可能エネルギーへのシフトは電源構成の多様化にもつながるとし、エネルギー安全保障を確保する観点からも重要だと訴えた。”

英国は世界でも有数の洋上風力発電大国で、2022年には消費電力の3割を風力で賄った。2000年初頭から洋上風力の普及に向けて本格的に動き始めて以来「日本や韓国、シンガポールなどの企業から支援を受けてきた」(シャップス氏)。インド太平洋地域には「何百ギガワット(膨大な)電力を生み出せる潜在力がある」と強調。「風力発電を定着させるためのモデルの輸出についても計画がある」とし、技術のみならず制度面でも貢献したい考えを示した。英国では再生可能エネルギーの普及に向け「差額決済契約(CfD)制度」を導入している。発電事業者の投資リスクを減らすため、対象となる電源ごとに入札に基づく固定価格と市場価格の差額を政府が補填する仕組みだ。”

“同じ島国の日本とは「類似点が多い」と話し、水深が深い海でも使える浮体式洋上風力の開発などで連携を強める意向を示した。英国に進出している日本企業に加え、日本に投資している英国企業の幹部らとも対話を進めていると明らかにした。英国は欧州連合(EU)離脱後、インド太平洋地域への関与強化を戦略として打ち出しており、エネルギー分野でも協力関係を模索している。洋上風力発電の輸出や技術移転はこうした取り組みの一環といえそうだ。ロシアによるウクライナ侵攻で天然ガスや石油の価格が上昇した。シャップス氏は「ロシアのプーチン大統領による違法な侵略はエネルギーの重要性を表面化させた」と指摘。ロシア産エネルギーからの脱却で同盟国が協力する必要性に触れ「暴君から『身代金』を要求されるようなことを防がなければならない」と話した。”

日本が取り組んでいる石炭火力でアンモニアを混焼する手法に関しては「英国は支持しない」と明言した。アンモニアは燃やしても温暖化ガスが出ないが「危険なのは石炭利用の延命を助長することだ」とくぎを刺した。”

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