高山リード、筬(おさ)を世界へ

テキスタイル(生地)関係の仕事をされている方は「筬」についてご存じだと思います。織機の部品のひとつで、枠(わく)に竹や金属の薄板(筬羽、おさば)を多数並べた櫛形のものです。筬羽のすき間に経糸(たていと)を通し、経糸の密度を一定にして織物の幅を定め,機械的に通された緯糸(よこいと)を打ち込むことによって布の織り目を密にするために用いられます。織機メーカーでは日本の豊田自動織機や津田駒工業が有力ですが、その基幹部品であるリード(筬)を製造するメーカーの話題です。

2023年9月5日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

高山リード(金沢市)は織機の基幹部品であるリード(筬=おさ)の輸出に力を入れている。アジアや米欧に展開し、国内生産分の8割近くを輸出している。省エネ型の織機に対応するなど新製品開発も進め、海外市場の開拓に弾みをつける。リードは筬羽(おさば)と呼ばれるステンレスの薄板を数多く並べる。くしのような細い隙間に経糸(たていと)を通して一定の間隔に整列させ、前後に動かしながら緯糸(よこいと)を織り込んでいく。織物の最終品質を左右する重要な役割を担う。”

高山リードは精密な加工技術を持つ国内最大手だ。石川県中能登町の主力工場では様々な大きさのリードを生産する。衣類などの織機に搭載するリードは長さ2~3メートル程度。製紙業界に欠かせない「ろ過布」向けのジャンボリードは長さ12~15メートルほどになる。長さ12メートルのジャンボリードの場合、約3万枚の筬羽が必要になる。まずは機械で並べる。そのうえで隙間が均等になるよう、熟練の職人が先端がツルの首に似た道具などを使って手作業で調整していく。”

“海外ではジャンボリードの人気が高い。現在、世界で生産できるのは4社で、日本企業では高山リードだけだ。高山健常務は「筬羽の材料や均等に並べる技術などに工夫を施してきた。価格は海外の競合より高めだが、品質では負けない」と胸を張る。初めての海外展開は1972年の韓国。現地の繊維組合から「織物の発展に貢献してほしい」という依頼を受けて工場を立ち上げた。日本と同じ材料、同じ生産設備を使うようにしたという。その後はタイ、台湾、マレーシア、中国と生産拠点を広げてきた。今は韓国の工場はないが、海外では計5か所の工場を子会社または合弁で運営している。生産したリードは現地の織物会社向けに供給し、日本には輸入していない。

“カナダやイタリアの企業とは、ジャンボリードの技術援助契約を結んだ。日本から半製品の状態で供給し、現地で最終製品に組み立てて出荷する。ジャンボリードを日本から運ぶと、輸送費が製品代金の数倍かさむためだ。一方で「メード・イン・ジャパン」のリードの需要は依然として高い。「インドなどでは海外製でなく、日本製が欲しいという声が強い」(高山常務)という。10年ほど前の輸出比率は7割程度だったが、直近は8割に迫る。為替相場の円安傾向も追い風になっている。最近はリードの付加価値を高めることに力を入れ、省エネ型の織機に対応した製品などを開発している。職人の育成などを通じて高い品質に磨きをかけ、海外からの受注拡大につなげたい考えだ。”

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