古着人気、高値でも供給に限界

国内でも若者を中心に古着人気が定着しているようです。我が家の近所にも古着を扱っている店がありますので何回か覗いてみましたが、私のような年配の人間にはちょっと馴染まない気がします(私の偏見かもしれませんが)。衣料品のリユースが広がるというのは結構なことなのですが、実際に「売れる」古着は非常に限定されていて、そう簡単に手放しで喜べるような状況ではないようです。下記の記事の最後にもありますが、「先進国の古着人気と再利用の取り組みは微妙にかみあわない」というのが現実のようです。それでも、「上質な服」が、何らかの理由で不用になった人から、それをファッションとして受け入れる人へと受け継がれていくことは、ファッションの持続性を構成する一要素だと思います。

2023年11月1日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

下北沢の古着店

古着の取引価格が上昇している。若者を中心に消費が拡大し「古着文化」が定着。仕入競争が熱を帯びる中、供給がそれほど増えないのも影響している。「迷宮」のような複雑な流通をたどると、衣類特有の再利用の難しさが浮き彫りになる。”

“ダボダボの上着、破れたジーンズを着こなす若者ら。平日昼下がりの下北沢(東京都世田谷区)は活気にあふれていた。古着店は新型コロナウイルス禍でも40~50店程度増え、200店近くが軒を連ねる。2022年の古着輸入量は、人気の米国古着を中心に1万トンを超え、過去最高だった。古着店、原宿シカゴの飯塚努社長は「国内アパレルの商品が均一化し魅力を失う中、個性的なファッションを求める人が買っていく」と話す。”

仕入競争は激しさを増し、調達価格は上昇する。貿易統計から計算すると2022年の1キログラムあたりの輸入単価は5年前に比べ3割程度上がった。円安の影響を除いたドルベースでも「ここ4~5年で2割程度は値上がりしている感覚だ」(古着店のデザートスノーの鈴木道雄社長)。1940~50年代など「ヴィンテージ」と呼ばれるものは1000万円の値段が付くという。”

古着の流通

古着は世界的なブームだ。調達も欧州や中国のバイヤーが入り乱れる。「物価が上がってきたとはいえ、日本ではまだまだ店頭価格に転嫁しにくい。素早く末端価格を上げられる欧州勢にはかなわない面がある」(鈴木社長)。円安もあり、下北沢では大量仕入れのために来日した欧州バイヤーが闊歩する。「買い負け」の影が忍び寄る。流通量が多いとみられる国内メーカー品の古着も、人気を受け値上がり傾向だ。価格分析ツールを運営するオークファンによると、ネットオークションの平均落札価格は「メンズ」で6347円(9月調査)。コロナ前の5年前に比べ1割程度高い。”

値上がりの要因は供給面にもある。関係者の間では、2023年に入り「世界でも日本でも古着の発生が減ってきた」といわれる。家庭が古着を出すのは購入後2~3年が多いとみられる。コロナ禍で新品の購入を絞った影響が出始めたようだ。そもそも日本の消費者が買うような古着は発生量のごく一部だ。環境意識の高まりで再利用の機運が高まっても、売り物になるのは状態が良く、人気のある一部の衣類に限られる。ファストファッションの広がりで供給量が増えたこともあり「古着を持ち込む人は増えているが、多くは高い値段がつかない」(リサイクル店)。”

“世界的な古着の流通網にも不安定な側面がある。古着流通は途上国向けのビジネスだ。日本や米欧で発生した古着は一度、マレーシアなど東南アジアに輸出され選別される。膨大な古着の山を、手作業で選ぶ作業が不可欠になる。低賃金が強みになる。国内古着市場の規模は不透明だが、2022年の輸出は22万トンと、輸入を大幅に上回ったとみられる。個性的な衣類を求める消費者のニーズに合わない古着の大半は、安価で途上国に回る。ただ環境問題や自国の繊維産業の保護を理由にした、輸入の停止措置も目立つ。どこの国からも買い手がつかない古着は焼却・廃棄も避けられない。

古着のリサイクルは金属などの再生資源に比べ、途上にある。環境省の調査によると、家庭などから出た衣類のうち、何らかの形で再利用される日本の古着は3割強で足踏み気味だ。鉄や紙の再利用がうまくいくのは、単一素材からなり、巨大な輸出市場があることが大きい。日本で取引される古着が値上がりしても、国内の供給を刺激する効果は限られる。「再利用を促進する国内外の安定した力強い需要が必要だ」(輸出を手掛ける故繊維会社)。先進国の古着人気と再利用の取り組みは微妙にかみあわない。

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