号外:産学連携で再生プラスティック循環システム構築

世界では、「脱炭素」や「海洋プラスティック問題」との関連で「脱プラスティック」が求められています。使い捨てプラスティック製品を減らすのはもちろんですが、可能な範囲で代替素材に切り替えることは大切です。しかし、軽くて物性が安定していて、成形性に優れるプラスティックはとても便利な素材で、私たちの回りの多くの製品で使用されています。そのプラスティックを大幅に削減することはなかなか難しいでしょう。そこで、使用後のプラスティックを再生して循環させる取り組みが進んでいます。繊維・ファッション産業では、PETボトルから再生された「リサイクルPET繊維」が使われています。これもプラスティックの再生利用の一例ですが、いったん繊維製品として使われると、その後のリサイクルが難しいという問題があります。プラスティックを再生循環する技術やシステムが構築されれば、環境負荷の低減に大きく貢献できると思います。

2023年10月22日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

東北大学の次世代放射光施設「ナノテラス」

東北大学やNECなど産学が連携し、プラスティックの循環システム構築に乗り出す。再生材の生産履歴などの情報をデータベース化し、成形加工メーカーが活用できるようにするなど、生産、回収、再生の一連の活動を網羅した仕組みにする。欧州連合(EU)で自動車への再生材活用の義務化を検討する動きがあるなど、世界でリサイクルが加速していることに対応する。”

再生材のデータベースは分別方式、日次、不純物の量など基本情報に加え、曲げや衝撃への強度や疲労寿命などの物性情報も含んだものにする。こうした情報が事前に確認できれば、成形加工メーカーは品質のばらつきが少ない製品を作ることができ、「プラスティックからプラスティック」のリサイクルが促される。NECがブロックチェーン技術を使って改ざん不可の再生材情報を流通する基盤を構築するほか、野村総合研究所、三菱総合研究所も協力する。”

素材分野に強い東北大学が全体を統括するほか、物性情報などの検査体制を構築する。同大学の青葉山キャンパス(仙台市)で2024年度に運用を開始する次世代放射光施設「ナノテラス」も活用し、ナノ(ナノは10億分の1)メートルの世界を可視化する電子顕微鏡で組成などを確認する。

回収、再生などリサイクルの高度化にも取り組む。セイコーエプソンが素材開発に取り組むほか、富山環境整備(富山市)が製造プロセスの開発、アミタホールディングスと東レが神戸市の協力を得て回収プラスティックの分別・供給システムの確立を目指す。自動車関連では公益社団法人の自動車技術会とも連携する。今回のプロジェクトは内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)に採択された。2027年度にも日本版サーキュラーエコノミー(循環経済)システムを確立し、実用段階に移行する計画だ。”

“プラスティックリサイクルを巡っては、EUの欧州委員会が7月、新車における再生材の利用目標を25%とするELV指令の改正案などを提案し、今後、審議する予定だ。2030年にも適用される可能性があり、日本でもプラスティック循環システムを早急に確立する必要がある。”

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