エアークローゼットの取り組み:タンス在庫からアパレル・シェアリングへ
エアークローゼットは、働く(忙しい)女性にオンラインで普段着を貸し出す、月額制ファッションレンタルサービスです。2015年にサービスを開始し、2019年5月現在の登録ユーザー数は25万人です。ファッションレンタルというとウェディングドレスや振袖のような着用する機会が限定された高価な衣装というイメージがありますが(昔ながらの貸衣装のような)、エアークローゼットでは忙しい女性の普段着をレンタルしています。
このサービスでは、ユーザーがオンラインで写真を参考にして好みの服を選ぶのではなく、運営会社のスタイリストがユーザーのライフスタイルや利用シーンに応じて、ユーザーに合う服を選んで届ける仕組みになっています。ユーザーの利用履歴がユーザー「カルテ」のように蓄積され、その情報をもとにスタイリストがコーディネイトした服を(3着)、専用ボックスに入れて届けます。気に入った服があれば買い取りも可能です。ボックスを返却すると数日後に別の新しいボックスが届きます。
インターネットを利用することで、消費者全体を対象にしたマス向けサービスではなく、ひとりひとりの個人に向けたサービスを提供することが可能になってきました。忙しくてなかなかファッション情報を収集したり、ショッピングにいったりすることができない女性に、新しい洋服(スタイル)との出会いを提供しています。情報(選択肢)が溢れた時代に、情報の取捨選択に余計な時間を使いたくない忙しい人を対象にしたサービスです。
エアークローゼットのサービスは、基本的には短期のレンタルを繰り返すシェアリング・エコノミーです。普通に服を購入して保有すると、どうしても「タンス在庫」となってしまう期間があるわけですが、それを避けて、製品が持っている製品寿命を最大限に有効活用することができるサービスです。保有する服が少なくなるということは、廃棄する服も少なくなるということで、これはファッション衣料における有効な環境配慮です。
女性のライフスタイルの変化、インターネットの普及と高度化、保有することからシェアして利用することへの消費者意識の変化など、多くの要素が組み合わされて生まれたサービスですが、持続可能な社会の構築(サステイナビリティ)にも一役買ってくれます。
このビジネスモデルには、「リデュース」の考え方につながります。アパレルを製造・販売する企業側からすると、消費(購入)されるアパレルの数量が減少することになりますから、あまりありがたい話ではないかもしれません。しかし、レンタルすることに適した服を企画するという形で、新しいビジネスチャンスにつながる可能性もあります。市場の在り方も、消費者の考え方も変化してゆきます。製品を供給する企業も、その変化をとらえて新しい市場、新しい消費形態に適した製品を開発して、供給して欲しいと思います。そうしながら、全体のフローの中で環境配慮、サステイナビリティを考えてゆくことが必要なのだと思います。
これまでの繰り返しになってしまいますが、レンタルされる衣料品も最後は廃棄物になります。衣料品のリサイクルないしは廃棄処理についての課題はそのまま当てはまります。「リデュース」しながら、使用後の「リサイクル」、廃棄処理も考えた商品企画が必要になってきます。