号外:海のごみ、河川で発生源を探る

2019年9月24日の日本経済新聞電子版に掲載された記事です。

“6月の20か国・地域首脳会議(G20大阪サミット)で各国は2050年までに海洋プラスティックごみ(海洋プラごみ)の新たな流出をゼロにする目標で合意した。海のごみの7~8割が河川から流出していると考えられている。関心の高さから各地で河川や海岸の清掃活動も続いているが、海洋へ流れこむごみの実態はつかめていないため、発生源を探ろうと河川ごみの調査が各地で進んでいる。

“水中で細かく分解されたプラごみの量や素材を調べようと環境技術ベンチャーのピリカ(東京・渋谷)は国内約60地点の河川を調査している。自社開発した機器で一定量の水を吸い込み、網目0.3ミリ以下のプランクトンネットで微細なごみを回収する。プラスティック片を手作業で仕分けし、大学などの研究室へ成分分析を依頼する”

“映像で川ごみの分析を行うのは東京理科大学の研究グループ。水質調査中に流れてくる大量のごみで作業がはかどらず少しでも減らしたいと思い調べ始めた。三重県などの河川や水路に設置したカメラで撮影した水面の映像を解析し、プラスティックなどの人工系と草木などの自然系を一定以上の水準で判別できる。流出量や種類を調べ、地域に周知することで最終的に削減にまでつなげる狙い。”

この記事を読んで、特定の課題に対して、その解決のための具体的な行動につなげてゆくことの困難さを改めて感じました。6月の20か国・地域首脳会議(G20大阪サミット)で海洋プラスティックごみ(海洋プラごみ)の問題が取り上げられ、議論されたことは新聞などでも大きく報道されたので、記憶されている方も多いと思います。この会議で2050年までに海洋プラごみの新たな流出をゼロにする目標が設定されました。と、表面的なニュースは耳にしていても、この記事にあるようなその複雑な背景に思いが至った方はどのくらいいらしたでしょうか。

「川は海につながっている。」当たり前のことですよね。「海のごみの7~8割は河川から流出していると考えられる。」と聞くと、なるほどなあと思います。しかも、「その実態がつかめていない。」となると、2050年の目標達成は相当難しいのではないかと思います。実態がわからなければ、有効な対策をとることはできません。ボランティアで河川の清掃作業をすることは大切なことですが、それだけで河川ごみ、海洋ごみが大きく削減できるということにはならないように思います。考えてみれば、これまで川を流れて海に流出するごみの種類や量の系統だった調査がなされてこなかったというのは、わかるような気がします。自分自身を含めて、私たちはこの問題に当然向けられるべき関心を向けてこなかったということです。サステイナビリティの課題は私たちの身近にあるのです。遅まきながら、この記事で紹介されているような実態調査が始まっていますが、いざ調査するとなると、記事にあるようにとても大変な作業です。しかしこのような地道な調査を継続し、データを整備しなければ、有効な対策をとることができないのだと思います。

G20での目標達成に向け、政府は今後東南アジアなどの河川で海洋プラごみの発生源の調査に乗り出すとのことです。この問題は地球規模の問題ですから、その対策のためには、当然関係国や周辺国との連携が必要になります。しかし先ずは国内の調査をしっかり進めて、調査手法や調査データの評価の仕方などの知見を積み重ねて、その知見を海外で活用してもらうというようなステップも必要ではないかと思います。日本の技術と知恵を結集して、この問題の解決にリーダーシップを発揮してゆければと思います。

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