号外:温暖化の目安「2℃」の由来は?

2015年に合意された「パリ協定」では、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2℃未満に、できれば1.5℃までに抑えることを約束しています。でも、なぜ2℃(ないしは1.5℃)なのでしょうか?これまでの様々な研究成果に基づいて定められた目標だとは思うのですが、実際のところ、この目標が何を意味しているのかについての理解が不十分なように思います(少なくとも私は)。このところ、地球温暖化による気候災害や環境への悪影響に関する報道に触れたり、自分自身の経験からも以前と比べて気候が変化していることを実感することが多くなりました。温暖化対策の目標の意味や、現在の状況を正しく認識することが、私たちのこれからの行動を決めてゆく第一歩になるのだと思います。

2023年12月12日付けNational Geographic電子版に掲載された記事より、

“国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の最新の報告書によれば、世界の政策が中間的な道をたどれば、地球の平均気温は2100年までに産業革命前より2.7℃上昇すると予測されている。地球温暖化につながる炭素の排出量をどのように、またどれほど早く削減すべきかについては各国の間で意見の相違があるものの、この気温上昇が壊滅的な結果を招くだろうという点に関してはほぼ全ての国が同意している。”

“そのため、2015年のパリ協定に署名した196ヶ国は、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2℃未満に、理想的には1.5℃までに抑えることを約束していた。2023年11月30日から12月12日までアラブ首長国連邦のドバイで開かれている国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で、参加国はこの目標に向けた自国の進捗状況を報告することになっている。”

世界気象機関(WMO)のデータでは、地球の平均気温はすでに、産業革命から1.2℃上昇している。パリ協定の目標値を達成困難と見るか、十分達成可能と見るかは人それぞれだ。仮に目標を達成できたとして、地球はどのような事態を回避することができるのだろうか。また、この数字はどのようにして決められたのだろうか。”

“米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の気候科学者ダニエル・スワイン氏によると、この目標値には、科学的であると同時に政治的な面もあるという。「地球物理学的には、1.5℃であろうが、2℃であろうが、3℃であろうが、どんな数字であろうが、神聖で絶対的な領域というものはありません」。それよりも、気温が1℃上昇するごとに、地球が後戻りできない「転換点」に至る可能性が高まるということを認識する方がずっと重要であるという。”

“米ノースイースタン大学の公共政策・都市問題研究学部長を務めるマリア・イバノバ氏によると、気温上昇を2℃までに抑えるという考え方はパリ協定のずっと前からあったという。それは、1970年代に米エール大学の経済学者ウィリアム・ノードハウス氏が大雑把な計算で導き出した数字だった。ノードハウス氏は2本の論文のなかで、気温が2℃上昇すれば、気候変動はそれまでの人間の経験を超えた領域に達するだろうと主張した。”

“とはいえ、2℃という数字が何もないところからいきなり出てきたわけではないと指摘するのは、米ペンシルバニア大学科学・持続可能性・メディアセンター長のマイケル・マン氏だ。「確かに、絶対的な閾値(いきち)があるわけではありません。むしろ『悪い』から『非常に悪い』領域に移行する地点を客観的に定義したものです。2℃というのは、全ての懸念すべき分野において危険水域に入ったことを示す妥当な境界線なのです」。「現在起こっている1.2℃でも、上昇し過ぎと言えます」と、マン氏は言う。「すでに甚大な自然災害は起こっています。問題は、私たちがどこまで被害を許してしまうかです。1.5℃の上昇は深刻です。2℃の上昇はさらに深刻な事態を引き起こすでしょう。そして3℃の上昇ともなれば、文明の崩壊もあり得ます」。”

“マン氏は、2018年にIPCCが発表した「1.5℃特別報告書」が、1.5℃と2℃の間に壊滅的な違いがあると報告している点を指摘する。「この報告書は、0.5℃違っただけで、北極海の氷が消失し、極端な暑さが3倍に増え、種の絶滅が拡大し、世界中のサンゴ礁が失われる可能性があると示しています。グリーンランドや西南極氷床が消失する転換点にも、限りなく近づくでしょう(それによって、海面は数メートル上昇する)。極めて厳しい内容です」。”

言うまでもないが、平均気温の上昇とは、文字通り平均でしかない。北極など一部の地域では、他と比較して気温の上昇が4倍の速度で進んでいる。自分の国では海面上昇がそれほど目立っていないように見えても、海抜の低い太平洋の島国などは、国家存亡の危機に立たされる。これらの国々が、最前線に立って気温の上昇を1.5℃以下に抑える重要性を訴えているのはそのためだ。”

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