号外:食品ロス対策、賞味・消費期限延長へ

冷蔵庫の奥の方から取り出した食品の賞味・消費期限を見ると、すっかり期限を過ぎていて、「申し訳ない・・・」と思いながら廃棄した経験を、みなさんもお持ちのことと思います。期限内に無駄なく使い切りたいと思ってはいるのですが、このようなロスを完全になくすことができていません。世界中で「食品ロス」の削減が課題になっています。私たちの日々の生活に直結しているテーマですから、もう少し意識のレベルを上げて取り組みたいと思います。

2023年12月20日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

食品パッケージに表示される賞味期限・消費期限が延長される見通しとなった。製造や包装の技術が進歩し安全性が高まっているとして、消費者庁が2025年度中にも期限を算定する目安を見直す。期限切れなどで廃棄される食品ロスを減らす狙いがある。”

“食品表示法は劣化が早い総菜などには「消費期限」、保存期間の長い缶詰などは「賞味期限」を表示するように定める。賞味期限は食品をおいしく食べられる期限で、消費期限は安全を確保できる期限を示す。それぞれの期限はまず、メーカーなどが独自に試験や見た目、味の検査から暫定的な期限を算出。そのうえで、保管環境の差などによって食品劣化に変動が生じる可能性を考慮し、1.0未満で任意の「安全係数」をかけて決める。”

“消費者庁は食品製造業者などに対して、安全係数について「0.8以上を目安に設定することが望ましい」と通知している。例えば、暫定的な賞味期限までの期間が100日で安全係数が0.8なら賞味期限は80日となる。消費者庁は「0.8以上」という現在の目安を引き上げる方向で見直す。安全係数が0.85や0.9と大きくなれば賞味期限や消費期限は延びることになる。同庁は各業者の安全係数の設定方法などの実態調査を2024年度に始め、早ければ2025年度中に新たな目安の公表を目指す。目安自体を撤廃する可能性もある。”

背景には、かつてに比べて食品の安全性を確保しやすくなっていることがある。食品は酸化などによって傷みやすくなるが、製造時の衛生確保技術が進歩し、密閉性を高めた食品包装も普及した。表示の見直しと並行し、食品ロスを減らす仕組みづくりも進める。10月の専門家会議で、フードバンクへの食品の寄付や外食時の食べ残しの持ち帰りを促進する法的措置の検討などを議論した。具体的な施策を近く決定する。”

政府は2000年度に国内で980万トンあったロスを2030年度までに489万トンに減らす目標を掲げる。6月にまとめた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に「食品ロス削減目標達成に向けた施策パッケージを年末までに策定する」と盛り込んだ。食品ロスの削減は世界的な潮流だ。2015年に国連で採択された目標は2030年までに1人あたりの食品廃棄量の半減を求めた。日本女子大の小林富雄教授(フードシステム諭)によると、海外には「安全係数」という概念がない国もあるという。日本の期限設定の基準は厳格だとして「食品の表示期限の延長は食品ロス削減に一定の効果がる」と話す。”

一方で、賞味期限と消費期限の違いをはじめ正しい理解は十分に進んでいるとは言えない。消費者庁の2022年9月調査では、「あまり理解していない」「全く理解していない」と回答した人が合わせて21.9%にのぼった。小林教授は「表示への正しい理解を広げるための消費者教育も重要になる」と指摘する。安全性の確保という視点も欠かせない。食品ロス問題に詳しい近畿大の石村雄一准教授(環境経済学)は、食品表示は消費者が食品を選んだり安全性を正しく判断したりするための重要な情報源だとして「期限の延長にあたっては、科学的根拠基づいた期限の設定が一層重要になる」と話している。”

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