スパイバー、植物由来繊維の生産10倍へ

スパイバー社は微生物発酵プロセスによって作られたたんぱく質素材(繊維)「Brewed Protein(ブリュード・プロテイン)」を開発・生産し、新素材として繊維産業の環境負荷低減を目指している企業です。資金を集めて設備を増強し、製造コストを低減して普及に弾みをつけようとしています。

2024年4月12日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

Brewed Proteinの紡糸設備

“環境負荷が低い新素材を開発するSpiber(スパイバー、山形県鶴岡市)は植物由来のバイオマス原料を使った繊維を大幅増産する。数十億円を投じ、2026年をめどに年間生産能力を現状の10倍の最大2000トンに引き上げる。世界では環境対応の衣料品素材を求める動きが広がる。増産投資でコストを低減し、国内外アパレル企業への採用拡大を狙う。ここ半年間で、小松マテーレや関西ペイント、兼松などから第三者割当増資で新たに100億円強を調達した。その一部を今回の投資に充てる。”

山形県鶴岡市の本社工場で原料を繊維に加工する紡糸設備を増強する。植物由来の人口たんぱく質素材を液体に溶かしたものを、極細のノズルから長い繊維として紡ぎだす。現在は年間約200トン生産している。設備増強で繊維の生産コストは半分以下になる見通しだ。現状の出荷価格は高級素材のカシミヤと同水準で、アパレル企業が一般的なブランドに採用しにくい課題があった。出荷量も大幅に増やすことで幅広い商品への採用を見込む。

スパイバーの人口たんぱく質素材はサトウキビなどから得られる糖類を微生物に与え、発酵させて作る。製造時のCO2や水の使用量なども少ない。クモの糸の研究で培った知見を基に、狙った物性を持つ素材を製造できるのが強みだ。織物にした場合、カシミヤのような肌触りの良さが特徴で、ゴールドウィンの「ザ・ノース・フェイス」など15ブランドが採用済みだ。”

衣料品の環境対応は喫緊の課題だ。経済産業省は繊維やアパレル業界向けに、植物由来の素材や再生繊維の使用を促す指針をまとめた。欧州でも規制強化が進む。環境負荷の低いバイオ繊維への注目度は高まっている。スパイバーは慶応大学発の技術を基に設立。企業価値が10億ドル(約1500億円)以上の未上場企業の「ユニコーン」でもあり、今後の成長が期待されている。”

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