一生で必要な服はわずか149着

タイトルになっている試算はちょっと極端なものですが、私たちが毎日着用している衣服の購入・使用・廃棄については再考する必要がありそうです。TPOやその日の気分に合わせて装うために、どれくらいの着数の服を用意するのかはとても悩ましい問題です。どこまでが必要で、どこからが余裕(無駄?)なのか・・・。衣料廃棄物を減らし、繊維・ファッション産業の環境負荷を低減するために、アパレル企業や行政も様々な対策を考え実施しています。しかし、やはり私たち消費者のマインドが変わっていかなければ、持続可能な循環型経済には移行できません。

2024年8月17日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

“英国の衣料品ブランド「Rapanui(ラパヌイ)」は2022年、成人後に必要な衣服は149着だけとする試算を公表した。リサイクル素材などを使ったサステナブルブランドで、衣料廃棄物の問題にも取り組んできた。試算は、シャツ類やズボンなどの耐用年数をもとに英国の成人(18歳)以降の平均寿命(約63.2年間)までに必要な枚数を算出した。シャツ類なら耐用年数2.74年で生涯に23枚が必要。靴は同1年なので63足要る。合計すると149。下着や靴下は含まれていない。”

“極端にもみえる試算だが、同社デジタルコンテンツマネージャーのマット・ホプキンスさんは「服には耐久性があり、大切に使えば費用と廃棄量を大きく減らせる。服の過剰消費や環境への影響について多くの人に知ってほしかった」と狙いを明かす。価格を抑えた衣料品を大量生産し、短いサイクルで販売する「ファストファッション」は世界中で人気だが、環境に与える負荷も深刻だ。”

“環境省によると、2022年に国内で新たに供給された衣類は79.8万トン。一方で家庭から69.6万トンが手放され、45.8万トン(66%)が廃棄されている。リユースは19%、リサイクルは15%にとどまる。衣料品は紡績や染色などの製造段階でも大量の水を消費し、多くのCO2を排出する。だが日本は衣料品の98%が輸入品で環境負荷が見えにくい。環境省の試算では服1着を作るのに必要な水は約2300リットル(浴槽約11杯分)。CO2排出量は約25.5キログラムで500ミリリットル入りペットボトル約255本製造分に相当する。一方で、環境省が15歳以上の男女7000人に調査したところ、年間で1人あたり18着の服を購入し、15着を手放していた。一度も着ないままクローゼットの中に眠る服は35着あった。同省循環型社会推進室の奥山航さんは「大量生産・大量消費・大量廃棄という一方通行型のシステムを循環型に転換しないといけない」と話す。”

“企業や自治体は対策に乗り出している。ユニクロは2001年にフリースの回収・リサイクルを始め、2020年から「RE.UNIQLO(リ・ユニクロ)」のコンセプトでダウンのリサイクルや商品の修理などに取り組む。全店舗に回収ボックスを設置。商品を選別してアフリカや中東の難民キャンプなどに送っている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と連携し、年間支援計画を立てて安定供給している点が特徴だ。2023年8月時点で80の国と地域に累計5463万点を提供。20の国・地域の45店舗には修理やリメークを行うリ・ユニクロスタジオも設けた。サステナビリティ担当のシェルバ英子さんは「作って売って終わりではなく、商品を長く着てもらう活動に力を入れたい」と話す。”

“在庫処分サービスのshoichi(大阪市)はアパレル企業から余剰在庫を買い取り、リサイクルしている。その数、年間4000万点。洋服は多様な素材でできており再生が難しいとされるが、同社はボタンや金具を手作業で丁寧に取り除き、工場で細かく砕いて加工する。再生したウールやフェルトを自動車メーカーなどに販売し、取引先は10年で倍増した。山本昌一社長は「売れ残った服が一枚も廃棄されない社会にしたい」と意気込む。”

京都市の古着回収ボックス

京都市は2022年9月、地元企業などと使用済み衣服の回収・循環プロジェクト「リリース・キャッチ」を始めた。京都信用金庫の支店など市内外212ヶ所に回収ボックスを設置。2024年6月までに約8.5万着を回収し、アパレル販売のヒューマンフォーラム(同市)などを通じて古着として約1.5万着を販売した。大学生とともに運営する「循環フェス」は過去5回の開催で累計5.5万人が来場した。3.5万着を回収し、9800着が持ち帰られた。市地球温暖化対策室の松本紗代子さんは「来場者の半数は20代。若い世代に『リユースやリサイクルはかっこいい』と認識してもらい、循環型モデルに育てたい」と期待する。”

“消費者には何ができるだろうか。お茶の水女子大学付属高校(東京・文教)の葭内ありさ教諭は「愛着が持てる服を厳選して買うことが大切」と語る。葭内さんは再利用素材を使った服の制作などを授業に取り入れ、環境や社会の持続可能性に配慮した「エシカル消費」を教える。気に入った服を大事に扱うようになり安易に捨てなくなるという。海外では最低限の点数に抑えた洋服や靴を上手に着回す「カプセルワードローブ」という取り組みも広がっている。ファッションは日常を彩る楽しみの一つだ。自分に合った向き合い方を見つけたい。”

4月の循環フェス、古着の「0円マーケット」

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