号外:森林火災、温帯や寒冷地の森林喪失
世界で森林喪失が深刻化しているとの報告があります。いうまでもなく森林はCO2を吸収して貯蔵しています。その森林が破壊されれば、いくらCO2の排出を減らす努力をしても、その効果が相殺されてしまいます。さらに近年、温暖化の影響で森林が失われる原因が変わってきているという話題です。
2024年月21日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
“世界の森林喪失が深刻になっている。森林喪失の主要な原因が熱帯雨林の違法伐採から、温暖化に伴う寒冷地や温帯での森林火災に変わった実態が明らかになった。森林が減ればCO2の吸収が減り、温暖化が加速する悪循環に陥る。森林は多くのCO2を吸収する貯蔵庫だ。森林が燃えるとCO2が大気に放出される。温暖化ガスの排出抑制に取り組んでもCO2の濃度や気温の上昇を抑えられなくなる。2025年のCOP30(第30回国連気候変動枠組み条約締約国会議)は「地球の肺」とも呼ばれるアマゾンがあるブラジルの都市ベレンで開かれる。環境保護の重要性を訴える世界的なシンボルと言える場所での開催を前に、森林保護の議論が活発になっている。”
“「森林におけるCO2排出の震源地は、熱帯からその外へ移行している」。英イーストアングリア大学の研究グループはこう指摘する。2001年から23年までに森林火災に伴うCO2排出量が6割増えたと計算し、地域ごとの違いを分析した。CO2が増加した主な原因は、熱帯以外の地域だった。2001年から23年までに排出量は約5億トン増えた。ブラジルやカナダなどの大国がエネルギー消費で出す1年分に相当する。特に影響が大きいのがカナダやアラスカなどの寒冷地の森林だ。CO2の排出は20年前の3倍になったと見積もった。”
“状況はさらに悪化する恐れがある。「アラスカとカナダの森林火災で、2021年から50年までに出る温暖化ガスの排出量は自動車26億台の1年分に相当するだろう」。米ウッドウェル気候研究センターの研究者、ジェニファー・ワッツ氏は危機感をあらわにしている。2023年には気温の上昇と乾燥によって、アラスカとカナダで前年の約6倍にあたる1770万ヘクタールの森林火災が発生した。アラスカやカナダには北半球の陸地面積の約4分の1を占める「永久凍土」がある。この土壌はCO2やメタンなどの温暖化ガスを多く含む。寒冷地では世界平均よりも温暖化が進んでいるため火災のリスクが高まる。火災が頻発すれば想定より多くの温暖化ガスが放出される懸念があるとワッツ氏は指摘した。”
“森林に潜むCO2増加のリスクは、ほかにもある。国際エネルギー機関(IEA)が注目するには料理の問題だ。IEAは人口が急増するアフリカ地域に電気を使った調理器具を普及させる必要性を強調している。アフリカでは約10億人が調理にじか火を使っており、木材や木炭などを燃料に使う。人口が増え続ければ森林の喪失面積も増える。IEAの幹部は電力インフラの整備と調理器具の支援が「問題の解決に向けて必要になる」と訴えている。”
“アマゾンでも影響は続いている。研究者が警戒するのは湿潤な熱帯雨林で乾燥が進む「ダイバック」と呼ぶ現象だ。アマゾンなどの熱帯周辺には雨雲を作る上昇気流を生む熱帯収束帯と呼ぶ場所がある。「気候変動で北上して降水量が減る」「アマゾンが乾燥したサバンナのようになる」「山火事が誘発され、多くの炭素が失われる」とのシナリオが予想されている。2021年のCOP26では100ヶ国以上の首脳が加わる「森林減少を2030年までに食い止める」とする宣言が採択され、日本も加わった。森林を失えば気温の上昇や気象災害にも直結する。世界各国による強調した取り組みが求められる。”