号外:内山工業、コルク栓でトップシェア

こういう話題は大好きです。私はウイスキーや焼酎をよく飲むのですが、考えてみればコルク栓は非常に身近で、大切な製品ですね。毎日、開けたり閉めたりを繰り返しています。そのコルク栓ですが、国内で約7割のシェアを持つトップメメーカーが存在するとはまったく知りませんでした。しかもそのメーカーは自動車部品も製造しているそうです。なんだかすごい会社ですね。

2024年11月5日付け日本経済新聞電子版に掲載された生地より、

内山工業のコルク栓

自動車部品などを製造する内山工業(岡山市)は、コルク栓で国内トップシェアを持つ。特に焼酎やウイスキーなど、何度も開け閉めする栓では高いシェアを誇る。多品種少量の生産技術や研究開発に強みを持ち、瓶の形状や酒の種類に応じた高品質のオーダーメードに対応できる。全国の酒類メーカーなどから信頼を勝ち取り、酒文化の発展にも貢献している。

“岡山市にある同社工場は、1933年の操業開始当時に使われていた防火用レンガが残る歴史あるたたずまいだ。コルクガシの皮をくりぬいた天然コルクと、くりぬいて残った部分を一度砕いて固め直した圧搾コルクの2種類を製造する。コルク粒を入荷して圧搾し、栓の形に加工するのは国内では内山工業だけ。製造工程はきめ細かい作業の連続だ。コルク粒は硬さによって分別してお湯で洗い、蒸気を使って酒の風味に影響する原因物質を取る。処理したコルク粒には接着剤を混ぜ、押し固めると栓の形になる。欠けや色、密度などを検査して焼き印を押した後、表面をコーティングして完成する。”

内山工業の工場内部

内山工業によると、酒類を密封するプラグ栓の流通量で同社は約7割のシェアを持つ。ウイスキー用のうち約90%、焼酎用のうち90%弱だ。ワイン用コルクについては約20%を同社のコルクが占める。大手の酒類メーカーだけでなく、多くの中小零細の酒蔵とも取引がある。焼酎は詰め方や瓶が酒蔵ごとに異なるため既製品では対応できず、内山工業はコーティングの仕方や栓の長さに応じてオーダーメードで製造する。各社の瓶や酒に合わせたコルク栓はトラブルが起きにくく、万が一の場合でも調整しやすい。多品種少量での生産やものづくりへの誠実さが支持され、シェア拡大につながってきた。”

幅広い要求への対応を可能にしているのが一貫した自前の研究開発体制だ。2013年には型に入れたコルク粒に横から圧力をかけて圧搾コルクを作る新製法を開発した。従来は筒に入れたコルク粒に縦方向の圧力を加え、長い棒状に固めたものを切って作っていた。長さを調整しやすいが、横方向からの応力に対して柔軟性に欠けていた。新製法によって栓にしなやかさが生まれ、漏れにくさと開けやすさを両立させた。コルク&FPM事業部長の澤達也氏は「天然のものを工業製品にする難しさがある。限られた天然素材である以上、無駄なく使わなければならない」と説明する。トップメーカーならではの苦労もある。コルク粒を入荷して加工する企業は国内で他になく、汎用の機械は使えないため自社開発する必要がある。圧搾コルクの欠けや色を画像から自動判別して検査する装置など、あらゆる設備を開発してきた。”

最近では日本酒用の圧搾コルクも取り扱う。これまで日本酒は加温殺菌してから瓶詰めをしていた。ただ近年は酒の香りを損なわないよう、低温で瓶付けしてから加温殺菌するなど手法が多様化している。従来のプラスチック栓では対応が難しく、コルク栓を売り込む余地が広がっている。内山工業は日本酒向けのコルク栓として、ポリエチレンでコーティングした栓を使っている。コルクは高温になると膨らむため、瓶詰め後の加温殺菌でも密封性が高まる。コーティングなどにより、加温殺菌時や夏場の倉庫で保管する際に中身が膨張して上昇する圧力に耐えることができる。コルク栓は特に、香りを飛ばさずに瓶詰めする高級日本酒で需要が期待できる。見た目の高級感も演出できる利点もある。コルクに多様な価値を持たせ、洋酒や焼酎、日本酒に至るまで幅広い酒の魅力を引き出すことで競争力を一段と高める考えだ。”

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