号外:ドイツの再生エネルギー発電、初めて化石燃料を上回る

2020年1月4日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より

ドイツの発電量に占める再生可能エネルギーの比率が2019年に初めて化石燃料を逆転した。太陽光や風力などの再生エネの発電シェアは2018年から5.4ポイント上昇し、46%に達した。石炭などの化石燃料は約40%だった。英国でも原子力を含めたCO2排出ゼロの電源が初めて化石燃料を上回り、欧州での脱炭素を裏付ける結果となった。

2019年ドイツの電源別発電量

“独フラウンホーファー研究機構太陽エネルギー研究所(ISE)が2日、ドイツの2019年の純発電量をまとめた。企業の自家発電は含まない。1年間の発電量5155億6千万キロワット時(515.56テラワット時)のうち24.6%を風力が占め、最大の電源となった。発電量は2018年比16%増え、シェアは4.2ポイント上昇した。”

“太陽光のシェアは0.6ポイント上がり9.0%だった。バイオマスと水力もそれぞれシェアを伸ばし、再生エネ全体で237テラワット時となり、化石燃料の207テラワット時を上回った。

“化石燃料では品質の悪い褐炭が4.4ポイント減、石炭が4.5ポイント減とそれぞれ大きくシェアを落とした。発電量でもそれぞれ22.3%、32.8%減った。天然ガスはシェアが3.1ポイント上昇し、10.5%、2022年までに運転をすべて停止する原子力は0.5%増の13.8%だった。フラウンホーファーISEは、再生エネの逆転の理由について「発電費用の安い再生エネの拡大で、欧州排出量取引制度(EU-ETS)の排出価格が上昇し、CO2排出の多い褐炭などの発電では利益が出なくなっている」と指摘する。”

ドイツの石炭火力発電所

“英米ナショナルグリッドによると、英国では2019年に風力・太陽光・水力・原子力を合わせたCO2排出ゼロの発電量シェアが48.5%となり、化石燃料の43.0%を初めて上回った。欧州連合(EU)は2019年12月、2050年に域内のCO2の純排出量をゼロにする目標で合意した。自動車などの電動化が柱のひとつで、動力となる電気を生み出す発電の脱炭素が実現のカギを握っている。”

欧州の電力脱炭素化、すなわち再生エネルギー発電の普及は着実に進んでいます。2050年に、域内のCO2の純排出量をゼロにするためには、自動車などの電動化を進めなければなりませんが、そのために必要な発電能力を化石燃料に頼っていたのでは、CO2排出量の削減にはなりません。再生エネルギー発電の拡大は、CO2排出抑制(=脱炭素社会の実現)にとって不可欠な条件です。

これに対して日本の現状ですが、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」によると、2017年の電源別発電量は次表のようになっています。

2017年日本の電源別発電量

再生エネ(含む水力)・原子力の合計は発電量の19%で、CO2排出ゼロ発電の割合は2割に達していません。残りの81%は化石燃料による発電です。そのうち石炭火力(安価だがCO2排出量が多い)は32%を占めています。日本は山地が多い地形のため、大型の風力や太陽光発電の普及がなかなか進まないという事情はあるにしても、日本と欧州の再生エネ発電拡大の差は歴然としています。現状の差も大きいですが、欧州では再生エネ発電拡大のための制度設計を含めて、計画的に実行されていることと比較すると、日本では、「脱炭素社会の実現」という掛け声は聞こえてきますが、そのための具体的な施策がなかなか見えてこないように思います。

日本は国内外で石炭火力発電所の新増設を進めており、先般マドリードで開催された第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)では、出席した小泉環境相が各国からの日本批判にさらされました。先進国では石炭火力を廃止する動きが相次いでいます。欧州ではフランスが2021年まで、英国が2025年まで、ドイツも2038年までに石炭火力の全廃を掲げています。カナダも2030年までには原則閉鎖する方針です。

生活と産業を維持するために必要な電力は確保しなければなりません。技術革新による「省エネルギー」を徹底すると同時に、化石燃料発電から再生可能エネルギー発電への切り替えを国として強力に推進しなければなりません。地球温暖化による環境危機は、日本の国内都合を待ってはくれません。世界で脱炭素の機運が高まる中で、日本が世界にどのように貢献してゆくのか、日本のエネルギー政策が問われています。

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