号外:小泉環境相に期待!日本、アジアは石炭火力発電をやめられるか?

2020年2月3日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より

小泉環境相が石炭火力発電所の輸出へ懸念を表明した。思考停止状態が続く日本のエネルギー政策を議論するきっかけになることを期待したい。小泉環境相は1月21日の会見で、「国民と国際社会の理解が得られない」と、三菱商事などがベトナム中部で計画する石炭火力発電所建設・運営事業「ブンアン2」と、融資を検討する国際協力銀行に不満を表明した。”

地球温暖化対策の道筋を定めたパリ協定の本格運用が2020年から始まった。各国の取り組み強化が求められるなかで、石炭火力の輸出を支援する日本は世界中の批判を浴びている。ESG(環境・社会・企業統治)を重視した投資先の選別が強まり、欧米の金融機関が石炭火力への融資を取りやめている。こうした資金をあてにした新設は事実上、不可能になりつつある。三菱商事も仕掛かり中以外の新規案件はやらないと宣言済みだ。”

過去20年間に建設された石炭火力の9割はアジアにある。発電量に占める石炭火力の比率はアジア以外では約2割だが、アジアは6割。高い石炭火力への依存度の一方、成長センターのアジアは他のどの地域よりもエネルギーを必要とする。成長を維持しながら、脱炭素の要請にどう応えるのか。その処方箋を示さない限り、アジアの脱石炭は進まない。日米欧が融資をやめても、石炭火力を必要とする国は自力で建設を続けるだろう。”

アジアでも再生可能エネルギーを中心とする非化石電源への転換を目指す必要がある。ただ、欧州の脱石炭を後押しする風力発電の適地が、東南アジアにおいてはベトナムやフィリピンの一部を除いて限られている。欧州のように国どうしをつなぐ送電網も乏しい。エネルギー転換が一足飛びに実現しないとすれば、過渡的な選択として、足元で必要となるエネルギーを石炭に比べてCO2の排出が少ない天然ガスや、石炭火力を使う場合も環境対策を施した高効率設備の導入を促すことが、アジアの一員としての日本の役割ではないだろうか。

“発電に限らず、港湾や鉄道など、新興国の成長に欠かせないインフラ需要は拡大している。またインフラビジネスでは、発電設備や鉄道車両などの機器単体の品質や価格から、インフラ全体の運営力へ競争の軸が移っている。例えば発電事業では、プラントの発注・建設から、ファイナンスの手配、燃料調達、発電した電力の販売、保守運営などの多様な要素を組み合わせ、投下資本を長い時間をかけて回収する。”

先進国からの温室効果ガスの排出量は徐々に削減されています。その一方で、世界最大のCO2排出国である中国、および経済成長を続けるアジアの新興国からの排出量は増加傾向にあります。アジア諸国からの排出量削減がうまくいかなければ、パリ協定の目標は達成されず、地球温暖化防止にはつながりません。現在のインフラビジネスではインフラ全体の運営力が求められています。アジアの一員としての日本に求められていることは、蓄積してきた技術力とノウハウを発揮して、アジア地域からのCO2排出量削減に貢献することです。世界中から批判されている石炭火力発電所の輸出ではありません。また環境に配慮したインフラビジネスは、日本にとっても大きなビジネスチャンスになると思われます。

日本は、先ず自国の化石燃料、特に石炭火力に依存したエネルギー政策を大きく転換しなければなりません。このHPでも紹介している洋上風力発電、潮流発電や太陽光発電などの再生可能エネルギー活用を加速しなければなりません。日本の温室効果ガス排出削減目標は、2030年までに2013年度対比26%削減するというものですが、世界各国からは削減目標の上積みを求められています。しかし、原発の再稼働、再生可能エネルギーの普及が進まず、化石燃料に依存してエネルギー需要を賄うことを優先すれば、日本のエネルギー転換は進みません。小泉環境相のリーダーシップに期待したいと思います。

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