号外:コオロギは食糧問題の救世主となるか?
食料不足に関する話題です。現在の日本の食糧自給率は4割を切っています。私たちの食糧は過半を世界からの輸入に頼っています。その一方で、日本の食品ロス(廃棄)は2016年で643万トンにも上っています。
<食品ロスの削減:食べ物を粗末にしてはいけません>の項参照
現在の世界人口は約77億人ですが、そのうち8億2000万人がアジア・アフリカ地域を中心に飢餓状態にあると言われています。
現在の飢餓については、食糧の絶対量の不足というよりは、貧困や格差の拡大、地域紛争などによって食糧が豊かな地域に偏在し、世界の人々に行き渡っていないという問題だと思えます。言い換えれば、現在であれば、私たちが誠意をもって知恵を絞れば改善可能な問題だということです。しかし今後世界の人口は増え続けてゆきます。将来的には食糧の絶対量が不足することが懸念されています。
ナショナルジオグラフィック日本版2018年11月号に掲載された記事より
“世界の人口は2050年までに90億人を超える。そのとき、必要となる食料は現在の1.5倍。森林を伐採したり、工業型農業の用地を拡大したりせずに(地球環境維持に配慮して)、食糧需要を満たすにはどうすればよいのだろうか?また、作物を育むための豊かな土壌を維持していくには、どうすればよいのだろうか?”
“食糧問題を解決するための1つの課題が、タンパク質を作り出す新たな方法を見つけること。なぜなら、牛や豚を育てる大規模な工場式畜産が環境に与える負荷は非常に大きく、限界に近付きつつあるからだ。”
“畜産は、人間活動による温室効果ガス排出量の7分の1を占めている。集約的で大規模な畜産によって牛肉を生産する場合、カロリーベースで比較すると、必要な水は野菜や穀物を栽培する場合の8倍、必要となる土地の広さは160倍に上る。国連が牛肉の消費を減らすように呼び掛けているのも無理はない。そうした動きを受けて、新たな食品会社が誕生してきている。”
“米国のビヨンド・ミートという企業もその1つで、エンドウ豆のタンパク質とテーブルピートの赤い色素を使って、ハンバーガー用のパティなどを製造している。ほかにも「インポッシブル・バーガー」という商品を販売する会社もある。これは、植物を原料にして作られたパティで、赤い色素をもつ「ヘムタンパク質」を使うことで、肉汁さながらの赤い汁が滴っているように見える。いずれの商品も、米国や香港で販売されている。”
“米国では、高タンパクの家畜飼料や加工食品の原料として、食用に適した昆虫が注目されている。昆虫、特にコオロギは環境面でも魅力が大きい。キロ当たりの含有量で比べた場合、コオロギのタンパク質と微量栄養素は牛肉を上回る。また、高密度かつ暗い飼育環境でもよく育つため、狭い面積で大量に養殖できる上、処分する排泄物も比較的少なくて済む。”
“テキサス州オースティンにあるアスパイヤ社は全米最大の食用コオロギ養殖場を運営していて、業績は順調に伸びている。主力商品であるコオロギをすり潰したパウダーは、焼き菓子やエネルギーバー(栄養補助食品)、スムージーなどに使われる。”
日本でも、イナゴや蜂の子などの昆虫が食用とされてきましたから(私は食べたことがありませんが)、コオロギが食用になることも理解できます。しかもコオロギは豊富なタンパク源となり、養殖効率も高いということです。アメリカでは既に事業化されています。コオロギを食べると聞くと顔をしかめる方も多いと思いますが、地球環境に配慮しながら新たなタンパク源を探さなければならないという現実を踏まえれば、有力な選択肢なのだと思います。牛肉や豚肉だけでなく、魚も気候変動、海洋汚染と乱獲によって近年は漁獲量が減少していますから、こちらも予断を許しません。人口が増加し、食糧が不足してくる近未来に、50年後に私たちが何を食べているのかはなかなか想像できませんが、現在のような食生活を続けることはできないように思います。