号外:プラスティックごみ削減における課題

2020年3月3日付けNational Geographic電子版に掲載された記事より、

これまでに生産された92億トンのプラスティックのうち、69億トンがごみになっている。その大半の63億トン、実に90.5%が一度もリサイクルされずに終わった。この数字は世界に衝撃を与え、英国の王立統計学会は「90.5%」を2018年の「今年の統計」に選んだ。プラスティックごみの12%は、ほとんどがヨーロッパとアジアで焼却され、約79%は埋め立てられるか自然環境に漏れ出している。これまでに生産されたプラスティックの約半分が2000年以降に生産されたと聞けば、ここ数十年間でのプラスティック生産の加速振りを実感できるだろう。世界経済フォーラムが発表した2016年の報告書では、プラスティックの生産量が今後20年で倍増すると予想されている。

“プラスティックの生産コストは非常に安い。世界規模で経済的に実行可能なプラスティックのリサイクルシステムが発展しにくいのは、このコストの安さが主な障害になっているからだ。再生・再利用プラスティックが普及しないのは、新品のプラスティックを作る方が安上がりだからだ。

“プラスティックごみの削減策のほとんどは、経済的な面の他にも多くの課題を抱えている。技術的課題や、システム的な制約などだ。例えば、生分解性プラスティックは、実際には生分解されない場合が多く、特に海ではバラバラに砕けてマイクロプラスティックになりやすい。また、堆肥化可能プラスティックのほとんどが、かなり高温にしないと分解されず、特殊な産業用コンポスターでの処理を必要とする。埋め立てるだけでは生分解されないのだ。”

注)生分解性(堆肥化可能)プラスティックは、実際の用途で必要な物性を維持するように生分解性が設計されており、あるいは物性に見合った用途で使用されており、それぞれの生分解条件(温度、湿度、微生物条件など)を満たさなければ生分解されない。埋め立てれば、一様に生分解するものではない。

“プラスティックごみを細かく砕いて溶かし、新しいプラスティック製品にする「物理的リサイクル(マテリアル・リサイクル)」では、異なる種類のプラスティックの混合や食品汚れなどにより、再生されるうちに強度やその他の特性が低下してしまう。業界アナリストは、プラスティックを原料の分子に戻す「化学的リサイクル(ケミカル・リサイクル)」が有望とみており、企業側も、化学的リサイクル法の開発に取り組む例が増えている。しかし、もともと高いリサイクルのコストを下げられるかという課題が残っている。”

いずれの方法にせよ、使用済みのプラスティックをきちんと回収、分別しなければ機能しない。しかし、プラスティックごみに関する最もやっかいな問題が、この回収と分別なのだ。

プラスティックの生産、廃棄、リサイクルについてまとめた記事です。コストが安く、物性が安定していて、成形も容易なプラスティックは大変便利な素材です。しかし、これまでに92億トンが生産され、69億トンがごみになっていると示されると、その量の膨大さに改めて驚きます。

新品のコストが安いために、手間をかけたリサイクルがなかなか普及せず、結果として、大半が焼却ないしは埋め立てられるか、自然環境に漏れ出していると言われています。埋め立てられたり、自然環境に漏れ出したプラスティックは、物性が安定しているために、微細化しても分解されず、長く地中や自然環境に留まります。これが海洋でのマイクロプラスティックの問題を引き起こしています。生産・使用時の優れた特性(低コストと物性安定性)が、使用後にはリサイクルや処分の障害となり、環境問題を引き起こしているという何とも皮肉な状況です。いくら便利な素材だとしても、このままプラスティックの使用量が増加してゆけば、自然環境にとってますます大きな脅威になることは明らかです。

プラスティックごみを削減してゆかねばなりません。どうすればいいのでしょうか?色々なアプローチがあると思いますが、ひとつの考え方は私たち(消費者)が少しの不便を我慢するということだと思います。プラスティックは便利ですが、先ずは、可能な範囲でガラス(瓶)や紙(包装、容器)などのよりリサイクルし易い素材に切り替えることで(昔のスタイルに戻すことで)、プラスティックの使用量自体を抑制することです。多少重かったり、破れやすかったり、取り扱いに不便を感じることがあるでしょうが、そこは私たちが我慢するべきことです。次には、ある程度のコストアップを容認してリサイクルのために技術開発やシステム構築を促進することです。持続可能社会を目指すために、資源循環型の生産・消費体制を構築するために、プラスティックの問題は非常に重要なテーマです。

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