号外:欧州で進む脱石炭火力発電の流れ:日本の方針は?

2020年3月25日付けSustainable Brand Japanに掲載された記事より、

“ポーランドの電力会社エネルガとエネアは先月、ワルシャワ郊外に新たな巨大石炭火力発電所を建設する共同プロジェクトを取りやめた。国内電力の80%を石炭火力に頼っているポーランドにとって、これはとても大きなニュースだ。欧州では、新しい石炭火力発電所などは言うまでもなく、古い石炭火力発電所にも未来がないということに、ポーランドのエネルギー・セクターもようやく気付き始めたようだ。”

西ヨーロッパでは、風力、太陽光発電は石炭火力発電の稼働コストを下回っている。実際に、50%以上の石炭火力発電所の原価費用は、太陽光発電エネルギー、陸上風力発電所、洋上風力発電所の均等化発電原価を上回っている。地形的に低コストの風力や太陽光の再生可能エネルギーを利用しづらい日本のような場所でさえ、現在使用している石炭火力発電所を使い続けるメリットは2024年ごろには失われるだろう。新しい石炭火力発電の開発をやめ、既存のものを座礁資産(競争力を失い、稼働しても採算割れになる資産)にしないためにも、使用停止のスケジュールを考えなければならない。

“石炭火力発電所がなくなることは地球にとって喜ばしい。2018年、石炭火力発電が、温室効果ガスの排出量が増加した最大の要因だった。現在、石炭火力発電によるCO2の排出量は全体の30%だ。座礁資産となる恐れから、今後、世界的に石炭の需要は減少するだろう。2019年、石炭を使った電力供給は、欧米での削減効果で2.5%減少した。しかしアジア圏の経済成長によって、次の5年間にあまり大きな変化はないだろう。2018年の石炭火力による発電量が世界の総発電量に占める割合は38%で、2024年には35%に下がる見通しだ。それでも、世界の最も主要な発電源であることに変わりはない。

日本の電源別発電量構成比(2017年度)

この表は、日本の2017年度電源別発電量の構成比を表しています。日本の発電は、実にその81%を火力発電に頼っています。そして、全体の32%は石炭火力発電です。2011年の東日本大震災前には30%程度を占めていた原子力発電の割合は、2017年度には3%まで低下しています。その間に、発電量の不足を補うために、火力発電の割合が62%から81%に増えています。その中で石炭火力発電は、全体の25%から32%へ増えています。日本での再生可能エネルギーへの転換は遅れているのです。

石炭火力発電所からのCO2排出量は膨大です。世界全体では総排出量の30%です。パリ協定において日本が約束したCO2排出量削減目標は、2013年(1317百万トン)対比で、2030年までに26%削減することです(目標:975百万トン)。国連からは、日本に対して削減量の上積みを求められています。2017年度の総排出量は1190百万トンで、2013年対比では90.4%です。現在のように、火力発電、特に石炭火力発電に依存した状態では、削減目標の上積みどころか、26%削減目標の達成さえ危ぶまれています。

私たちの生活と経済活動を維持するために、必要な電力量は確保しなければなりません。しかしいつまでも、短期的なコストメリットのために石炭火力発電に頼っているわけにはいきません。技術革新によって再生可能エネルギーによる発電コストは低下しています。その一方、石炭火力発電所が座礁資産化することが懸念され、石炭火力発電への投資は減少しています。日本も、もう一度エネルギー政策全体を俯瞰して、どのタイミングで、どのように再生可能エネルギー発電に切り替えてゆくのかを考えなければなりません。さらに、経済的な要因以外に、気候変動対策という観点から、迅速に行動することを求められていることを忘れてはなりません。

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