号外:世界の食料の3分の1が廃棄されている理由

ファッションとは直接関係ありませんが、このHPでもこれまでに「食」についてのトピックスを取り上げてきました。「食」は生活の最も基本的な要素で、自然環境に依存しています。世界には飢饉に苦しむ人々が約10億人いると言われています。人口の増加にともなって食糧増産が必要だとも言われています。その一方で、私たちは大量の食糧を無駄にしています。下記の記事をご一読ください。食料廃棄の実態がレポートされています。

2020年4月4日付けNational Geographic電子版の掲載された参考記事より、

“トリストラム・スチュワート氏は食品廃棄の問題に取り組むイギリス人活動家で、廃棄の実態を赤裸々に描いた書籍「世界の食糧ムダ捨て事情(Waste:Uncovering the Global Food Scandal)」の著者。捨てられる食材を使って道行く人々に食事を提供するイベントや、従来は腐らせるしかなかった余剰農作物を収穫するボランティア活動など、さまざまな活動を展開している。彼の試算によると、欧米各国で廃棄される食糧の4分の1もあれば、世界中で飢饉に苦しむ10億人の人々が食事にありつけるという。”

“「私がこの問題に取り組み始めた2001年には、信じ難いことに、食品廃棄に関する情報はどこを探しても見つかりませんでした。食品廃棄物を削減する方針を掲げている企業も皆無です。政府も何の発信もしておらず、EUで「ランドフィル・ディレクティブ(埋め立て処理するゴミの比率を削減する指令)」が採択されたくらいでした。この問題は隠蔽されていたんです。」”

“「企業がこの問題を隠すのは、自分たちがどれだけ多くの食品を廃棄しているかを世間に知られたくないからです。事実を知れば人々がショックを受けることを、彼らは知っているのです。私たち自身にも原因があります。私たちは普段、食べ物をゴミ箱に捨てながら、自分がいったいどれだけの量を廃棄しているかを直視しようとしません。私がこれまでにやってきたことの大半は、畑から食卓に届くまでの間に捨てられる食品の量を累計し、その規模を明らかにすることです。そこから得られた数値はまさに衝撃的でした。世界に供給される食品のうち、少なくとも3分の1は廃棄されており、富裕国においてはこの割合はさらに高いのです。」”

“「まず、畑で捨てられます。食料品店、とくに大手スーパーは、生鮮食品の見栄えのよさに基準を設けています。つまり見栄えのよくないもの、基準を満たすことができないものは、廃棄されてしまいます。畑から出荷さえされないものも非常に多いのです。」”

“「工場でも、毎日あたりまえのように食品を捨てています。たとえばサンドイッチを創るとき、パンの耳が捨てられます。パイを作るなら、切り取られた余分な生地は廃棄されます。小売店では棚に必要以上に商品を並べて、物がふんだんにあるイメージを演出します。食品はクリスマスのデコレーションのように、店を飾り付ける道具なのです。そして消費者。裕福な国の人々は、食品を前もって買っておこうとします。だから、食べるかどうかもわからないものを買うのです。」”

“「飢饉がある国にも食品廃棄の問題は存在します。小規模農家の多くは、作物を確実に市場に届けるための、基本的なインフラに投資するだけの余裕がありません。穀物貯蔵庫はあまりにお粗末で、低温殺菌や冷蔵の設備も、果物の出荷箱もなく、市場に日除けさえないことも珍しくありません。作物は厳しい陽射しさらされ、害獣や害虫に狙われて、結局は無駄になってしまうのです。」”

“「食品廃棄を減らすために、政府が介入すれば大きな力になるでしょう。通常は規制を増やすよりも、緩和する方が有効に働きます。EUが食品の見栄えに関する基準を緩和したのは前進でした。欧州はアメリカに先駆け、過剰生産に対する農業補助金を削減する方向へ動いています。これらは規制緩和の成功例で、食品廃棄の削減に貢献しています。」”

“「規制が功を奏した例もあります。ベルギーでは、スーパーに対し、余った食品は廃棄せず、すべて慈善団体に提供することを義務化する法律が導入されました。アメリカには『善きサマリア人法』と呼ばれる法律があります。これは食品を善意で寄付した企業を保護するもので、おかげで企業は訴訟を起こされる心配をせずに、積極的に食品を提供することができるのです。」”

「私たちは、自分たちが出す食品廃棄物をしっかり管理すれば、出費も環境への負荷も減らせることを理解しなければなりません。」

『善きサマリア人法』:英米法体系の国おいて、災難や急病により窮地となっている人を救うため、無償で善意の行動をとった場合、良識的かつ誠実な行動をとっていれば、たとえ結果として失敗してもその結果につき責任を問われないという趣旨の法律。

日本の食品ロスについては、<食品ロスの削減:食べ物を粗末にしてはいけません>の項を参照してください。

日本でも2016年度に643万トンの食品が廃棄されています(農林水産省資料)。55%は事業系の廃棄で、45%は一般家庭からの廃棄です。現時点で、世界的に食料の絶対量が不足しているわけではありません。しかしその分配と貯蔵・運搬は必ずしもうまくいっていないのです。「世界に供給される食品のうち、少なくとも3分の1は廃棄されており、富裕国においてはこの割合はさらに高いのです」、「欧米各国で廃棄される食糧の4分の1もあれば、世界中で飢饉に苦しむ10億人の人々が食事にありつける」のです。地理的、政治的、経済的な制約は多々ありますが、人類が知恵を使って、協力し合えば改善できる問題だと思います。

先ずは、自分の食生活を見直すことから始めましょう。栄養のバランスを考えて、おいしく、楽しく食事ができればと思います。ただ、食品をできるだけ無駄にしないようにしましょう。日本の食料自給率は40%を切っています。私たちは、自分たちが食べる食料の60%以上を世界の国々からの輸入に頼っているのです。

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