ドイツにて:サステイナブルなライフスタイル
衣料品の話ではないのですが、私がドイツに駐在していた20年ぐらい前の話です。ヨーロッパはご存知のように大変ワインが好まれる地域です。ドイツの街角にはワインのガラス瓶を色別(透明、茶色、グリーン)に回収する大きなボックスが設置されていて、定期的に行政が回収してリサイクル(溶融して再成形)していました。
そしてドイツはビールの国です。ビールもカンよりビンが中心で、空き瓶はケース単位で酒屋に持ち込んで、それと交換に中身代だけを支払うシステムでした。(最初はビン代も支払います)ビンは共通サイズで、ブランド表示も印刷ラベルだけなので、ラベルを水洗で剥がして洗浄すればそのまま再利用できます。日本のビールはアルミ缶が中心で、アルミ缶の分別収集・再利用はかなりの高効率で実施されているようですが、我々(消費者)は毎回アルミ缶のコストを含んだ価格でビールを購入しているような気がします。せっかく機能しているリサイクルのシステムですから、それに参加することで消費者が「ちょっと得した気分」になるような仕掛けがあっても良いと思います。回収したアルミ缶は再成型して再利用していますが、多少重くて不便でもガラスビンを使う方が省エネ、環境配慮という観点(サステイナビリティ)からは理にかなっているように思われますが、いかがでしょうか。
日本では、水やお茶等の清涼飲料にはほとんどの場合ペットボトルが使われています。ドイツではこれもビンで、ビールと同様のシステムです。ドイツの水道水は石灰が多くてそのままでは飲めないので、ミネラルウォーターは必需品で消費量も多く、持ち運びが重たい買い物なのですが、この辺りは徹底していました。恐らく今でも同様のシステムが継続していると思います。
プラスティックの使い捨てトレーやナイフ・フォーク・スプーン、ストロー等の使用も見直しできる部分と思います。近頃ストローについては色々とニュースが伝わっていますね。トレーも紙に切り替えるケースが出てきています。紙に切り替えて、再利用は無理で焼却するにしても、カーボンニュートラルということになります。スーパー等での食料品販売に使われる食品トレーは、分別回収されリサイクルされています。食品包装用のフィルムの代替は鮮度維持や衛生上の問題があってそう簡単ではないかもしれません。(昔は紙だったはずですが)レジ袋の有料化、そして削減はこのところだいぶ進んできたことを実感しています。
プラスティックは非常に安定していて加工が容易な便利な素材ですが、使用後はその安定性ゆえに環境汚染の問題が指摘されています。自然物は自然環境下で分解・循環されますが、非自然物(合成物)であるプラスティックはそうはなりません。自然環境下で生分解するプラスティックもありますが、実使用に耐えるほどの強度がなかったり、非常に高コストだったりして普及が進みません。また有限な化石原料からの合成であれば、資源枯渇という本質的な問題の解決にはなりませんし、植物由来であれば、カーボンニュートラルではあっても、世界的には不足している食料との競合という問題があります。多少不便になるとしても、元々使っていたガラスや紙のような天然物で代替やリサイクルできるのであれば、可能な範囲でプラスティックの使用は控えることを考えても良いと思います。
これらの例は私たちの身の回りで、少しだけ気を付ければ、あるいは少しだけ不便を我慢すれば環境配慮できる事柄です。環境負荷を低減するためには、多少の手間とコストがかかりますが、将来の地球環境を、我々の生活環境を維持してゆく(サステイナビリティ)ための努力を惜しんではいけないと思います。環境配慮のために必要なコストについては、最終的には我々(生産者であり消費者)が負担するしかないのですが、これらは社会全体として対応が必要な課題であり、そのコストについては社会全体として負担してゆくような制度を作ることが必要だと思います。
さて衣料品における環境配慮についてですが、「こうすれば良い」という方法があるわけではありません。衣料品のリサイクルはなぜ進まないのか、なにがボトルネックになっているのかについて次回から考えてゆきます。そうやって考えてゆく中から、小さくても効果がある解決策を見出せればと考えています。