GRS、グローバル・リサイクルド・スタンダード

色々な製品を使用後にリサイクルして、資源消費の抑制、廃棄物の削減、環境負荷を低減することが求められています。ファッション産業でも、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル繊維や、漁網からリサイクルされたナイロン繊維などが利用されています。今後ますますリサイクルされた材料の利用が広がることが期待されますが、その普及において気がかりな点もあります。未使用(バージン)材料とリサイクルされた材料は、一見しただけでは見分けがつかないことが多いことです。信頼できる企業がリサイクルから最終製品まで責任を持って管理するような場合は問題ありませんが、今後普及が進み、リサイクルされた材料や中間材が幅広く市場に供給されるような場合には、リサイクルされた材料が最終製品まで適切に管理されているかどうかを確認することは、結構大変な作業になります。このような背景の中で、市場や業界の要望もあり、リサイクル製品を適切に管理するための(業界)基準が設けられています。

GRS(グローバル・リサイクルド・スタンダード)は2008年にControl Union Certificationによって策定され、2011年にTextile Exchangeに譲渡された認証プログラムです。GRSは、リサイクル含有物(ポストコンシューマーおよびプレコンシューマー)、加工流通過程管理、社会および環境慣行、化学物質規制の第三者(認証機関)による認証要件を設定する、国際的な製品基準です。GRSは製品(最終製品および中間材)のリサイクル含有物を検証し(トレーサビリティ)、生産段階で責任ある社会的(労働環境面、倫理面など)、環境的(廃水管理やエネルギー使用など)配慮や、適切な化学物質管理(有害化学物質を含む加工薬剤の排除など)が実施されていることを検証しようとする企業の要求に対応しています。GRSの目標は要件を定義し、正確な含有物の申告と適切な作業条件、および有害な環境的および化学的影響が最小化されることを保証することです。

GRSのトレーサビリティ管理システムは、原料から製品までのサプライチェーンの中で、GRS認証(SC:Scope Certificate)を取得している企業間で所有権が変わるたびに、GRS認証取得企業のみが提供できる商取引証明書(TC:Transaction Certificate、GRS認証取得企業の要請で認証機関が発行)を付けることで、GRS対応製品であることを保証してゆく(チェーンがつながっていることの証明)ことで機能します。したがって、サプライチェーンの中にGRS認証を取得していない企業が介在したり、GRS認証取得企業であっても、何らかの理由(認証要件への不適合など)で認証機関からの商取引証明書を取得できない場合は、そこで保証のチェーンが途切れ、その後は非認証原料、非認証製品となってしまいます。また企業がGRS認証を取得するためには、認証機関の審査を受けて合格しなければなりません。初回認証取得後も、1年毎に認証機関の監査を受け、認証要件を満たしていることを確認することが義務付けられています。

製品のサプライチェーンに含まれる各企業が認証を取得したり、製品(最終製品および中間材)に商取引証明書を付けたりと、色々と手間のかかるシステムですが、「リサイクル」を正しく実施し、そのことを正確に市場に情報発信するためには、このような手続きが必要になります。今後、消費者の環境意識がますます高まり、リサイクル材料使用などの環境に配慮した製品への需要が高まることが予想されます。しかし、製造や販売に関わる企業による情報発信が不正確だったり、製品への表示に誤りがあったりすると、消費者の「リサイクル」そのものに対する信頼を損なうことになり、リサイクルやリサイクルした材料を使用した製品が生活や市場に定着することの阻害要因になってしまいます。そのような事態を避けるために、またリサイクル製品の普及を促進するために、このような制度をうまく使ってゆく必要があるようです。

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