ファーストリテイリング柳井氏が「サステイナビリティ」宣言
「ファッション衣料とサステイナビリティ」というテーマで情報発信していますが、このところファーストリテイリング(ユニクロ、GUなどを運営)関係の話題が多くなっています。言い換えれば、それ以外の企業から、なかなかニュースが入ってこないということです。ファーストリテイリングが頑張ってくれることは非常に結構なことなのですが、ファッション産業の多様性はどこへいってしまったのかと心配になってきます。新型コロナウイルス感染症の影響で、それどころではないのでしょうか。このような危機の時だからこそ、次の一手を打つために中長期的なビジョンが必要なのだと思います。
2021年2月9日付け日経クロストレンド電子版に掲載された記事より、
“ユニクロ、GUなどを運営するファーストリテイリングは、コロナ禍で消費者のサステイナビリティへの意識が高まったことを受け、同社が進める持続可能な社会に向けた取り組みを広く伝えるために「サステイナビリティレポート2021」を発表した。「リサイクル ダウンジャケット」をはじめとした生産過程での環境負荷低減や店舗での温暖化ガス排出量抑制などをまとめている。”
“今回発表した「サステイナビリティレポート2021」には、同社の環境負荷低減への取り組みや新型コロナウイルス感染拡大で困窮を極める医療現場に対する衣料支援、2001年にアフガニスタン難民への支援などからスタートし、20年かけて世界中に拡大させている同社の社会貢献活動、環境保全に向けて活動するZ世代や、夢を実現させた元難民へのインタビューなどを収録した。”
“2021年2月2日に開催したメディア向け発表会において、柳井氏は、「コロナ禍においてグローバルな人の往来や各国の経済が停滞しているうえ、政治的、経済的にも対立が激化している」と指摘。「最も必要なことは、世界中の個人や企業がポジティブに考え、すぐに行動して、力を合わせてピンチをチャンスにし、より良い社会を実現すること」と提言した。また、「今は目先の利益のことを考えて殻に閉じこもっている状態、世界とつながっているふりをしている」と話し、利己的な状況に世界全体が陥っていると警鐘を鳴らした。”
“「地球上で起きている問題は一国レベルでは解決できない。全世界に住んでいる人が自分の問題だと考えて行動しなければならない。世界の歴史を良く知って、ポジティブな将来を実現できるために何ができるのか。全世界の人々や企業が人類全体の将来を考えて、経済活動はどうあるべきか、地球環境はどうあるべきか、自分のビジネスはどうあるべきか、本当に真剣に考えて行動しなければいけない。」「難しい問題は『お上』が判断して、解決するはずだと考えていては駄目だと思う。個人の意思、企業の意思で行動を始めなければ、変えられるはずのものも変わらない。国境を越えるような判断や行動は、個人や企業から始めた方が早く、確実に広がっていく。」(柳井氏)
“ファーストリテイリングは2020年1月、「地球の平均気温の上昇を産業革命前との比較で2度よりもはるかに低く抑える」というパリ協定の目標を支持するために、ファッション業界で連携する取り組みを定めた「ファッション業界気候変動憲章」に署名。同年度には店舗のLED導入率93.8% を達成し、温暖化ガス排出量を2013年度と比較して38.7%削減した。海外店舗では太陽光パネルの設置も導入している。2050年までにCO2排出量ゼロを目指し、2021年度中にはさらなる具体策も決める予定だという。”
“同社は生産過程でも環境負荷の削減に積極的に取り組んでいる。ユニクロでは回収ペットボトルから作った再生ポリエステルを素材の一部に利用したり、店舗で回収した服を原料に新しい服を作る取り組み「RE.UNIQLO」をスタートしたりしている。2020年秋冬には「リサイクル ダウンジャケット」を発売した。これまでも回収した衣服を難民などへの衣料支援に再利用していたが、さらなる循環型リサイクルを進める。”