衣料品のマテリアルリサイクル:その実態と限界

マテリアルリサイクルの実態と限界

前に使用後衣料品では精度の高い素材分別が期待できず、純度の高い再資源化も期待できないことを書きました。

衣料品の輸入浸透率>の項参照

また使用後衣料品の回収自体が難しいことにも触れました。では何とか回収された使用後衣料品(廃衣料)はどのようにリサイクルされているのでしょうか。

リサイクルには大きく分けて3通りの方法があると言われています。

1、マテリアル・リサイクル:材料として再資源化すること

2、ケミカル・リサイクル:化学処理を施し化学製品の原料として再資源化すること

3、サーマルリサイクル:焼却して熱エネルギーとして有効利用すること。
  燃料化して利用すること。

これは私の個人的見解ですが、3については廃棄物を焼却して副次的に熱エネルギーを得ている意味合いが強いので、廃衣料のリサイクルとしては1と2について考えていきます。廃衣料のリサイクルでは上記1のマテリアル・リサイクルが中心です。

業者によって回収された廃衣料は、先ずリユース(海外への古着輸出が中心)できるものが選別されます。その後ウェスに向いたものが区分されます。ウェスとは工場・事業場等の機械・設備の油や水をふき取る布です。汚れが目立つということで色は白いもの、水や油を吸うということで素材としては綿が好まれました。しかし化合繊やその複合が増えてきたことでウェスに向く素材が減ってきたこと、それにも増して日本国内では生産現場が減少し、また機械・設備の向上により「油まみれ」の生産現場が減少したためウェスの需要自体が減少しています。残った雑多な服が反毛に利用されます。廃衣料のマテリアル・リサイクルの中心はウェスと反毛です。その割合は地域の産業事情によっても異なりますが、およそ半々と言われています。

マテリアルリサイクルのイメージ

反毛とは廃衣料をほぐして綿状にしたものです。もう少し具体的に説明すると、服からボタン等の付属物を除去し粗く裁断します。それを金属針が植えられた回転ドラムで繰り返しほぐして綿状にしたものが反毛です。反毛はぬいぐるみやクッションの中綿に使われたり、反毛を紡績して太い紡績糸を作り、それを編み上げて軍手にしたりします。また反毛からフェルトを作り、吸・遮音材などの自動車内装材や建築資材として再利用しています。反毛の原料となる廃衣料は雑多なものになるので、できあがった反毛も雑多な服の色が混じったものになります。このため必要に応じて脱色される場合もあります。反毛の原料は雑多な廃衣料ですから原料コストは安いのですが、その後の工程では結構人手がかかります。このため必ずしもバージン材料(未使用材料)と比較して競争力があるわけでもありません。このため反毛の生産も減少しています。

廃衣料のリサイクルはマテリアル・リサイクルが中心で、その主たる用途がウェスと反毛です。その両方の用途で需要は減少しています。廃衣料では精度の高い素材分別ができず、純度の高い再資源化ができないため、リサイクルするにしても用途が限られ広がりがありません。回収が難しいということを書きましたが、この状態でたくさんの廃衣料が回収できたとしても、リサイクルの出口(用途)が拡大できなければ回収したものの在庫が積みあがってしまいます。サステイナビリティを考えた取り組みも、再生品の需要が不足すれば伸びてゆきません。

繊維のケミカル・リサイクルについては次回触れますが、こちらはこちらで様々な制約があり、急拡大するという状況にはありません。すでに実績があり、細くなっているとはいえ廃衣料が流れるルートもあるマテリアル・リサイクルを拡大することを考えなければならないと思います。

*もう少し精度の高い素材分別ができないか?

*素材分別が容易になるような衣料の設計はできるのか?

*素材分別の精度があがれば、ウェス、反毛以外に新たな再資源化ができるのか?

*現状の反毛での新たな用途開拓は可能か?

*反毛製造企業の規模拡大、機械の大型化・高速化は廃衣料リサイクルに
 寄与するのか?

等々。どれもこれも簡単に答えが出るテーマではありませんが、従来の延長線上では廃衣料のマテリアル・リサイクルは拡大できません。むしろ衰退していってしまいます。

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