号外:世界の食料価格、10年振りの高水準

世界の食料価格が急上昇しています。国内でもニュースになっていましたが、新型コロナウイルス禍による移動制限で農作業の担い手である外国人労働者が不足している国も多く、その影響もあるようです。そういえば、最近色々な食料品の値上げの話が聞こえてきます。コロナ禍で収入が減っている家庭もありますから、食費の上昇は、その他消費のさらなる減速につながる可能性もあります。食料価格の上昇は、世界で食料が十分に手に入っていない地域の人々を直撃します。安定的な食料供給を実現、維持する制度の強化が必要です。また、日本を含む先進各国では、フードロスの問題についても対策を進めていかねばならないと思います。

2021年6月4日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

世界の食料価格が急上昇している。国連が6月3日発表した5月の食料価格指数(2014年~16年=100)は1年前から4割上昇し、2011年9月以来約10年振りの高水準となった。中国の旺盛な需要や、天候不順による供給減少が背景にある。企業の値上げもじわりと広がり、景気への影響が懸念される。食料価格指数は穀物や食肉、乳製品などの国際取引価格から算出され、食料全体の値動きを示す世界的な指標で、投資家や企業が注目している。国連食糧農業機関(FAO)によると、5月平均は前月比で5.8ポイント高い127.1。12ヶ月連続で上昇し、過去10年では最も速いペースで上がっている。”

世界食料価格指数の推移

“個別では、穀物が133.1と7ポイント超上昇した。トウモロコシや大豆、小麦などの価格は軒並み高騰している。主要な産地である米国や南米では、乾燥や雨など不安定な天候から、収穫が一段と減るとの見方が強まっている。一方、中国が養豚を増やすため飼料用の購入を増やしている影響も大きい。加工食品などに使う植物油も12.7ポイント高い174.7と値上がりが目立つ。世界で最も消費されるパーム油は、主産地の東南アジアの生産量が伸び悩んでいる。バイオディーゼルなど燃料の需要増への期待感も強材料だ。砂糖や食肉の価格も上昇が続く。

”食料価格の上昇の理由は他にもある。新型コロナウイルス禍による移動制限で農作業の担い手である外国人労働者が不足している国も多い。足元ではワクチンの普及で想定以上に需要が急回復し、生産が追いつかずに価格が上がりやすくなっている。世界的な金融緩和で投資マネーが向かっている面もある。”

企業は価格転嫁を迫られている。米食品大手ゼネラル・ミルズは穀物相場の高騰で、シリアルなどの値上げに踏み切る。食品世界最大手ネスレ(スイス)のシュナイダー最高経営責任者(CEO)は「今の環境は非常に不安定で、価格設定に対して行動をおこす」と語る。日本では日清オイリオグループなども値上げを打ち出している。新型コロナ禍で雇用や所得が打撃を受けた家計にとって大きな痛手となる。賃金が上昇しないまま物価高が続けば、消費が足踏みする恐れもある。そうなれば企業収益も悪化する悪循環をまねく。”

米連邦準備理事会(FRB)は、インフレ加速は一時的とみている。ただ、経済活動の再開で物価高が止まらず、市場で金融引き締め観測が強まれば、新興国から投資マネーが流出する可能性もある。ブラジルやロシアは通貨安と物価の高騰を警戒し、利上げに踏み切った。各国の金融政策のかじ取りは難局を迎えつつある。”

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