緊急:米軍、アフガニスタンから撤収!

アフガニスタンイスラム主義組織タリバンが首都カブールを制圧し、アフガニスタン政府は事実上崩壊しました。バイデン米大統領は8月16日の演説で「(米国の)アフガニスタンでの任務は国家の建設や中央集権的な民主主義の構築ではない」と述べ、8月末に予定する米軍の撤収を正当化しました。首都を制圧したタリバンには人権の尊重を求めるとしましたが、「軍事力ではなく経済や外交的手段を使って確保する」と語りました。バイデン大統領は、タリバンによるカブールの制圧について「我々が想定したよりも早かった」と述べ、戦況についての見通しが甘かったことを認めています。その理由について、アフガン政府の治安部隊が戦闘に挑まなかったことをあげ、「アフガン部隊が自分たちのために戦わない戦争で米兵が戦って命を失うべきではないし、そんなことはできない」と強調しました。「アフガン軍がタリバンに立ち向かわないのであれば米軍があと1年または5年、20年駐留しても意味がない」と述べ、終わりのなき戦争を終えるべきだと主張しました。

カブール国際空港から離陸する米軍輸送機

中国やロシアとの競争にも触れました。「米国がアフガンで無期限に巨額の資金を投じ、アフガンの安定に注意を向け続けることは真の戦略的競争相手が好むものでしかない」と述べました。バイデン政権はテロとの戦いに区切りをつけて中国との競争に注力したい方針のようです。

2001年9月11日に米国で同時多発テロが発生しました。その時、私と家族はアメリカの西海岸に住んでいました。東海岸で発生したテロによって直接的な影響は受けませんでしたが、アメリカ中が騒然とした空気に包まれ、非常に緊迫した状況だったことを記憶しています。その後米国は「テロとの戦いを」を掲げ、国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者の引き渡しを拒んだタリバン政権のアフガニスタン、サダム・フセウン大統領が支配するイラクに軍事介入し、20年間に及ぶ「米国最長の戦争」が継続されてきました。米軍は、アフガニスタンから8月末までに撤収する計画です。2001年12月にいったんはタリバン政権を崩壊させましたが、その後民主的な政治体制を構築し、定着させることはできませんでした。米国の撤収によって勢いを得たタリバン勢力は、米国の想定よりも早く首都を制圧し、時計の針が20年前に逆戻りしたかのようです。イラクの政情も、隣国であるシリア、イラン、トルコ等との関係が不安定で、また過激派組織「イスラム国(IS)」を完全に駆逐することはできず、予断を許さない状況です。米軍は、イラクでの軍事活動も年内には終了する計画です。その後はイラクの現政権によって国内秩序が維持されることが求められます。

米国はタリバンの掃討とアフガニスタンの民主化支援のために、戦費は少なくとも約250兆円を費やし、2300人以上の米兵が命を落としたと報告されています。アフガニスタン側でも民間人だけで4万人を超える犠牲者が出たとされています。この大きな犠牲を伴った20年間の戦争は、両国にとってどのような意味があったのでしょうか。「テロとの戦い」に米国が敗れ、タリバンが勝利したというような簡単な話ではありません。この20年間、アフガニスタンで懸命に生活してきた普通の人々は、タリバン政権が復活することで20年前の暗黒時代へ逆戻りしてしまうことを恐れています。イスラム原理主義を掲げた政府が、国民、特に女性や子供の人権を侵害することが懸念されています。国連の安全保障理事会は緊急会合を開催し、暴力の停止や人権の保護に向けた声明の発出を検討しています。またアフガニスタンが再び国際テロ組織の温床として利用されることも懸念されています。

米国の中東、西アジア地域への向き合い方は過去20年で大きく変化しました。シェールオイルの増産によって原油の純輸出国に転じたことで中東の原油への依存度が低下しました。現在の外交安全保障政策の軸足は対中国へシフトしています。しかし中東地域がこれ以上不安定化すれば、それはその周辺国だけでなく、世界に影響を与えるでしょう。日本は、昨年来脱炭素が叫ばれていますが、現在使用している化石燃料の大半を中東諸国に依存しています。その地域の政情がこれ以上不安定になれば、大きな影響を受けることになります。アフガニスタンで起きていることは、決して遠くの国で起きている、あまり関係のない事件ではないのです。日本として、タリバン政権を承認するかどうかという判断もありますが、先ずはアフガニスタンの人々への人道的支援について早急に対応すべきと思います。

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