号外:気温上昇1.8度に、各国排出目標引き上げで、IEA分析

「パリ協定」の目標は、産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1.5度以内に抑えることです。IEAは各国の最新の温暖化ガス排出削減目標を分析し、目標が完全に達成されれば産業革命からの気温上昇を今世紀末時点で1.8度に抑えられるとの見解を公表しました。改善の兆候は見られますが、まだ目標の1.5度以内には届いていません。IEAは、1.5度目標を達成するためには2030年までに更なる排出量の削減が必要で、「各国は将来の数十年については大胆な約束をしているが、短期的な行動は不十分だ」と指摘しています。

2021年11月5日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

国際エネルギー機関(IEA)は11月4日、各国が公表した最新の温暖化ガス排出削減目標を分析した結果、目標が完全に達成されれば産業革命からの気温上昇を今世紀末時点で1.8度に抑えられるとの見解を公表した。インドが新たに排出を実質ゼロにすると宣言したことなどが気温の上昇幅を押し下げた。”

”地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1.5度以内に抑えることをめざす。IEAは10月段階では、気温の上昇幅は現状の政策では2.6度、各国が公表した目標を達成しても2.1度になると説明していた。国連機関は現状の政策で気温は2.7度上昇するとみている。”

最近になって中東諸国やロシアは実質ゼロ目標を公表。COP26ではインドのモディ首相が2070年までに排出を実質ゼロにする目標を発表した。加えて強い温室効果を持つ温暖化ガスの一種メタンを2030年までに2020年比30%減らす枠組みに約100ヶ国・地域が参加した。パリ協定の目標達成に一歩近づいた格好だ。だが多くの国がめざす1.5度にはなお届かない。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、気温上昇幅の1.5度と2度には洪水の頻度や氷河の融解ペースに明確な違いがある。

IEAは1.5度にさらに近づけるには「2030年までに大幅な削減を進める必要がある」と各国に呼びかけた。各国の最新の目標では2030年時点でCO2が322億トン排出されるのに対し、1.5度では212億トンにする必要がある。「各国は将来の数十年については大胆な約束をしているが、短期的な行動は不十分だ」と主張した。”

日米欧などはIPCCの目安におおむね合致する形で、2030年時点の削減目標を引き上げた。欧州連合(EU)は1990年比40%から55%減へ、日本は2013年度比26%から46%減に、米国は2005年比50~52%減と定めた。だが世界最大の排出国である中国は2030年目標を据え置いている。一方、新興・途上国側は先進国が支援の約束を果たしていないと批判する。先進国は2009年、2020年までに年1000億ドルを支援すると約束したが、経済協力開発機構(OECD)によると達成は2023年にずれ込む見通しだ。”

長期の目標は、商用段階に至っていない水素やCO2の地中貯留などの技術を織り込めるためシナリオを描きやすい。半面、2030年までの短中期の目標は再生可能エネルギーなど今ある技術で削減幅をはじき出さねばならない。エネルギー構成の急激な変化は経済や故郷に影響を与えかねないため、政府が大胆な目標設定に及び腰になりがちだ。”

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