号外:COP26、石炭火力廃止46ヶ国賛同

世界で脱石炭火力発電の潮流は勢いを増しています。開催中のCOP26では、議長国の英国が石炭火力を廃止することを盛り込んだ声明を発表しました。世界の46ヶ国が賛同しましたが、日本や米国、中国、インドは加わっていません。原発の再稼働が進まず、再生可能エネルギーの導入も遅れている日本は、なかなか脱石炭火力に踏み込むことができません。電力の安定供給を確保することは重要ですが、このままでは世界が進める環境対策で後れを取ることになってしまいます。

再生可能エネルギーを「最優先に最大限に導入」、原発は?>の項を参照

2021年11月5日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

”英北部グラスゴーで開催中の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で、石炭火力発電の段階的な廃止をめざす動きが加速している。議長国の英国は11月4日、先進国などは2030年代、世界全体は2040年代に石炭火力を廃止することなどを盛り込んだ声明を発表。石炭廃止を初表明した23ヶ国を含む46ヶ国が賛同した。”

日本や米国、中国、インドは加わっていない。米国は州単位では一部が同意している。産炭国のウクライナのほか、インドネシアや韓国、シンガポールなどが段階的な廃止を約束したという。この声明とは別に国・地域や企業で構成する「脱石炭連盟(PPCA)」はウクライナなど7ヶ国が加わり、加盟国が48ヶ国になると明らかにした。日本は未加盟のままだが、シンガポールがアジアで初めて加わる。同国は電源に占める石炭の比率が1.2%と低く、ガス火力が95%を占める。”

先進国の脱石炭は進みつつある。主要7ヶ国(G7)のうち英国、フランス、イタリア、カナダは2030年までの終了目標を掲げている。ドイツは2038年としてきたが、2030年への前倒しを模索。米国は2035年に電力システムの脱炭素化を目指している。炭鉱を抱えるドイツと米国はいずれも2割以上の電気を石炭火力で賄っている。ドイツは鉱山閉鎖を含む廃止の費用として、電力会社に一定額を付与するなどして誘導する政策をとっている。石炭火力が現在約3割の日本は2030年度に2割弱を見込み、廃止目標はない。原発の再稼働が進まず、再生可能エネルギーの導入も遅れているためだが、批判を受ける。”

各国発電量の石炭比率と削減目標

世界の石炭火力の縮小でカギを握るのは中国やインドだ。米調査会社のグローバル・エナジー・モニターによると、世界の石炭火力発電所の容量は20.6億キロワット。このうち中国だけで10.4億キロワットと、過半が集中する構図となっている。インドは2.3億キロワットある。アジアの新興国は多くが石炭火力に頼る。先進国の支援により、石炭を縮小しても電力供給できる体制作りが課題となる。アジア開発銀行は11月3日、既存の石炭火力を計画的に廃止し、クリーンな電力への置き換えを促す枠組みを立ち上げると発表。発電量の6割前後を石炭に頼るインドネシアとフィリピンをまず対象にする。

”中国が石炭廃止へ向かうかは不透明だ。先進国が2030年の排出量削減目標の上積みや、2050年実質ゼロの目標を打ち出す一方、中国は2030年までにCO2排出量を減少に転じさせ、2060年までに実質ゼロにする目標を変えていない。9月に石炭火力発電所の海外輸出の支援停止を表明したが、国内には新設計画が多数ある。英国は10月4日、米国やカナダなど20ヶ国が石炭だけでなく、天然ガスや石油などすべての化石燃料の国外での公的融資の停止で合意したとも発表した。欧米と中国の溝は鮮明になっている。中国の姿勢が変わらなければ、温暖化対策が不十分な国からの輸入品に事実上の関税を課す国境炭素調整措置(CBAM)の導入機運が高まることも想定される。欧州で検討中で、貿易摩擦につながる懸念もある。”

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