号外:再生可能エネルギー、石炭抜き最大の電源に

電源別発電量比較

ロシアのウクライナ侵攻によってエネルギー安全保障への危機感が強まり、各国が国産エネルギーである再生可能エネルギーを急拡大しているという話題です。一方で日本の現状はどうでしょうか。表にもあるように、2030年までに化石燃料を大幅に減らし、再生可能エネルギーを拡大するとともに、原子力発電を活用するという目標は示されています。しかしその動きは世界各国と比較すると非常に遅いように思います。このところ一部の原子力発電所の再稼働が認められたとか、洋上風力発電の商業稼働が実現したというニュースは耳にしていますが、2030年の目標達成に間に合うのか不安です。2050年にはCO2排出のネットゼロという大目標も控えています。

2022年12月6日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

南アフリカの太陽光発電

国際エネルギー機関(IEA)は12月6日公表した報告書で、太陽光や風力など再生可能エネルギーが2025年に石炭を抜いて最大の電源になるとの見通しを示した。ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー安全保障への危機感が強まり、各国は「国産エネルギー」の再生可能エネルギーを急拡大する。侵攻で高騰した化石燃料と比べ、再生可能エネルギーの発電コストが割安なことも追い風だ。

“IEAによると、再生可能エネルギーの発電量は2027年までに2021年から約6割増えて1万2400テラワット時以上になる見込み。IEA報告書で「2025年初めには再生可能エネルギーが石炭を抜いて最大の発電源になる」と指摘した。電源別のシェアは2021年から10ポイント増えて2027年に38%になる。一方、石炭は7ポイント弱減って30%に、天然ガスは2ポイント減の21%になる。再生可能エネルギーの発電容量は2021年に約3300ギガワットで、2027年までに2400ギガワット増加する見通し。過去20年に世界が整備してきた規模に匹敵し、現在の中国の容量に相当する。”

IEA燃料別の発電シェア予測

ウクライナ侵攻は、化石燃料の高騰と供給不安を世界で引き起こした。エネルギーを他国に過度に依存するのは大きなリスクになるとの教訓を得た多くの国は、再生可能エネルギーの拡大をめざしている。輸入に依存する化石燃料と異なり、再生可能エネルギーは自国領に吹く風や降り注ぐ太陽光で発電できる。最も伸びるのが太陽光で、容量ベースで2026年に天然ガスを、2027年に石炭を抜く見通しだ。原材料の高騰で発電コストは増えるものの、大半の国では「最も低コストの電源」(IEA)になる。建物の屋根に設置する小規模発電も成長し、消費者の電力料金の負担軽減につながるとみる。風力は2027年には水力を抜き、太陽光、石炭、ガスに続く4番目の電源になる。許認可の手続きや電力系統インフラの問題があり、太陽光よりも伸びは緩やかだが、2027年までに増える再生可能エネルギーのうち、太陽光と風力で計9割以上を占める。

“IEAのピロル事務局長は声明で「現在のエネルギー危機が、よりクリーンで安全な世界のエネルギーシステムに向けた歴史的な転換点になりうるという事例だ」と述べた。けん引するのは米国、欧州、中国、インドで規制改革や導入支援策を拡充している。ウクライナ侵攻の影響を大きく受ける欧州連合(EU)はエネルギーの脱ロシア戦略「リパワーEU」を打ち出し、再生可能エネルギーの導入目標を引き上げようとしている。米国は今夏成立したインフレ抑制法で再生可能エネルギーのほか、電気自動車(EV)の普及や水素技術の開発など脱炭素化に重点を置いた。中印は火力発電も温存しながら、再生可能エネルギーの拡大にも力を入れている。中国は2027年までの世界の再生可能エネルギーの新規容量のほぼ半分を占める勢いだ。各国は太陽光パネルの製造などサプライチェーン(供給網)の多様化にも力を入れている。とりわけ米国とインドが投資を増やすため、足元では9割の生産能力を持つ中国のシェアが2027年には75%に低下する可能性がある。”

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