号外:草野球バット、飛距離を求めて5万円時代

第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は日本の優勝で幕を閉じました。今回の日本チームは、栗山監督のもと、大谷選手やダルビッシュ選手、吉田選手、そしてヌートバー選手などなど素晴らしい選手が揃い、そしてチーム一丸となって偉業を成し遂げました。私も手に汗握って中継を見ていました。監督、選手、スタッフその他関係者のみなさん、本当にお疲れさまでした。ということで、今回は野球にまつわる話題です。

私はプロ野球では広島カープのファンですが、あまり熱心なファンではありません。時間があるときのテレビ観戦が主体で、球場へ足を運んだことは数えるぐらいです。学生の頃にバスケットボールやハンドボールの経験はありますが、真剣に野球をプレーしたこともありません。以前はアマチュアもプロも含めて野球が大変盛んだったと思いますが、近年はそれ以外の選択肢も増え、また少子化の影響もあって、野球の競技人口も減ってきているようです。「若年層の野球人口が減るなか、購買力のある大人が野球用品市場での存在感を増している」という、ちょっとおもしろい話題です。

2023年3月8日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

ミズノが2020年に発売したバット「ビヨンドマックスレガシー」

草野球などで使われるバットの価格が値上がりしている。大手メーカーの市販モデルの最高価格は約5万円と、20年前の2倍近くになった。軽い力でも遠くに打球を飛ばしたいとのプレーヤーの声に応え、高品質な柔らかい素材を使用するなどして反発性能を高めた。若年層の野球人口が減るなか。購買力のある大人が野球用品市場での存在感を増している。”

バットは木製と金属製に加えて、金属に繊維強化プラスティック(FRP)などを組み合わせた「複合バット」がある。プロ野球は木製バットと硬式球、高校生の硬式野球では金属バットと硬式球を使う。複合バットは軟式少年野球のほか、大人が趣味で楽しむ軟式野球、いわゆる「草野球」で使われることが多い。”

ミズノの複合バットの価格

“複合バットの草分け的存在で、今も高シェアを誇るミズノの「ビヨンド」シリーズの歴史は2002年に遡る。軟式球はゴム製で内部に空洞があり、打った際の変形が大きく硬式球より飛びにくい。安打が出づらく得点の少ない退屈な試合になりがちだった。そこで全日本軟式野球連盟が「飛ぶバット」の開発をメーカーに要請し、誕生したのが「ビヨンド」だ。初代モデルは2万5000円だった。

20年で価格が2倍近くになった背景には大幅な性能の進化がある。「レガシー」は2018年に発売された前モデルより飛距離が7%アップするという。バットの中心部分には特殊な形状のFRPを使用し、打球面には新開発のウレタン材を使う。比較的柔らかい素材で軟式球の変形を抑える。ミズノによると、飛距離と耐久性を両立させるために、細かい成分調整などウレタンの改良を重ねてきたという。最近は原材料費や物流費が上がっている事情もあり、2022年12月には「レガシー」を発売当初の価格から約7%値上げした。”

若年層の野球人口が減る中で、購買力のある大人が野球用品市場をけん引している点も見逃せない。日本スポーツ協会によると、少年軟式野球の男子人口は2021年時点で約10万7000人。新型コロナウイルス禍前の2019年時点で既に11万人を割り込み、10年間でおよそ3割減った。少子化やサッカー人気などに押され、チーム数が減っていることが大きい。一方、笹川スポーツ財団によれば20歳以上に限った推計野球人口は2018年時点で384万人。10年間で2割減ったが、50代に限れば2016年を境に増加傾向が続き、2020年調査では57万人と2008年以来の多さになった。”

ゼットの複合バットの価格

“業界2位のゼットでは、少子化が避けて通れないなかで、販売戦略も一般向けの比重が大きくなったという。伝統的に高校野球用が強かった同社も、ここ数年で幅広い世代向けの商品開発を強化した。2023年1月には一般の軟式用に、ウレタンを使った複合バットを4万8000円で発売した。”

進化した複合バットに対するユーザーの評価は高い。年齢による体力の衰えをある程度補えるようになり、50代で柵越えホームランを打つプレーヤーもいるという。心身の健康や幸福を求める「ウェルビーイング」の概念が広がり、生涯スポーツの意義が改めて注目されている。ホームランを打つ喜びに年齢制限はない。バットの値段は元気な大人の躍動を映し出す。

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