大丸松坂屋百貨店のメンズファッション・サブスクリプション

衣料品のリサイクルが難しい理由のひとつに、消費者からの使用後製品の回収が難しいことがあります。一般の販売とは異なり、所有権の移転がなく、一定期間消費者が利用した後に製品が事業主の元へ返却されるサブスクリプション(レンタル)は、衣料品のリサイクルを促進するきっかけになるかもしれません。大丸松坂屋百貨店は色々な工夫をしながら、ファッション衣料のサブスクリプション・ビジネスを展開しています。

2023年3月28日付け日経クロストレンド電子版に掲載された記事より、

アナザードレス

“J.フロントリテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店は2023年2月21日、ファッションサブスクリプションサービス「AnotherADdress(アナザーアドレス)」にメンズ規格の商品を加えることを発表した。アナザードレスは、2021年3月に始まった百貨店初の月額制ファッションレンタルサービスだ。「Maison Margiela(メゾン マルジェラ)」「MARNI(マルニ)」「TOMORROWLAND(トゥモローランド)」「Theory(セオリー)」など、国内外を代表するブランドの服をレンタルすることができる。新型コロナウイルス禍の最中に開始した事業だったが、生活様式の変化やサステナブル(持続可能性)意識の高まりを追い風に、事業開始後、新規入会を制限するほどの人気サービスとなった。

“これまで女性向けに事業を展開していたが、今回さらなる事業拡大を発表した。新たにメンズ規格の商品を加えるだけでなく、プランの追加、サステナビリティーの軸でサービス拡充の旨を明かした。同日から事前会員登録受付を開始し、3月1日からレンタルが可能になった。”

メンズ規格の商品を追加した背景は3つあるという。1つ目は、サービス当初から要望があったこと。「男性から利用したいという声や、利用している女性から『夫に利用させたい』『メンズの服をレンタルしてみたい』という声があがっていた」。顧客だけでなく参画するブランドからもニーズがあったと明かす。2つ目は、急速に高まる、ジェンダーレスでファッションを楽しみたいという需要だ。性別や商品の規格にとらわれず、自由にファッションを楽しむ人が増えているのだ。3つ目は、すでにレディースの基盤が固まっていること。事業として非常に好調で、すでにシステム、配送などのオペレーションが確立できているため、低投資で参入できるからだ。”

メンズブランドとして国内外を代表する80ブランドが参加するが、9割以上のブランドがメンズファッション・サブスクリプション・サービスへの正規アイテム提供は初めてとなる。モード、ストリート、アメカジ、きれいめなど多様なスタイルで、ビジネスシーンでも休みの日でも楽しめるような商品をそろえた。コートやジャケット、シャツ、パンツ、バッグ、スポーツウェアなど、靴以外あらゆるカテゴリーに対応。メンズ規格の商品、約5割をジェンダーレス商品として提案する。新たに60ブランドを加えて合計173ブランドになるレディース規格商品と合わせて、事業全体としては213ブランドでの展開となる。

アイテムの表示方法

“メンズ規格の商品投入により、既存の女性ユーザーの満足度を高めたり、新規の男性ユーザーを獲得したりするだけでなく、パートナーや家族での利用も取り込んでいく狙いだ。既存の月額5500円(税込み、以下同)で毎月1着レンタルできる「ライトプラン」と、1万1880円で3着レンタルできる「スタンダードプラン」に加え、2023年3月1日から2万2000円で5着レンタルできる「スタンダードプラスプラン」が登場し、3プランの展開となる。1アカウント1ユーザーといった”縛り“は設けず、ある月は母が5着、次の月は母が2着、父2着、娘1着といった使い方もできるため、新規ユーザーの拡大が期待できそうだ。

“メンズ規格の拡充とともに、今回の事業拡大の柱となるのが、「サステナブルな取り組み」だ。これまでも、その時々に合った服をレンタルできるという、サステナブルな側面があったが、より一層強化していくという。その1つがオリジナルガーメントバッグの利用だ。これまで顧客配送には、段ボールを使用していた。これを全廃し、再利用可能なガーメントバッグへと変更する。これにより、ビニールの使用量が30%削減できる。ただし、一般的に、ガーメントバッグは洋服の持ち運びを想定したものだ。配送となると、荷物の重なりなどでシワや折り筋が発生してしまう。そこで同社は、芯地に反発性のある素材を使用したオリジナルのガーメントバッグを開発。ガーメントバッグであれば繰り返し使用もできるため、循環型の配送が可能となる。

オリジナルガーメントバッグ

“メンズアパレル市場は、レディース市場の半分程度であることを踏まえ、5年で1万5000人の会員獲得を見込む。2023年度は、メンズ規格の商品を約2万5000着、男性有効会員数は2500人を達成したい考えだ。メンズ事業の拡大に伴い、レディースも含めた事業規模は、2027年度末で売上高約75億円、有効会員数4万5000人を目指す。

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