古い服や靴、ここまで直る

愛着があるのに着れなくなった服や、傷んでしまった靴を修理してくれるサービスがあります。最近、駅やショッピングモールで見かける服や靴の補修よりも、より本格的なサービスです。対応可能な条件がありますし、費用も納期もかなりかかります。それでも愛着がある製品を修理して長く使い続けることは素晴らしいことだと思います。ファッションの持続可能性を考えていくうえでの基本なのだと思います。

2024年4月10日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

心斎橋リフォーム東京

「若いころ、着ると不思議と仕事がうまくいった。服がよみがえると自分も若返る気がする」。都内の会社員(62歳)は約20年前にオーダーしたスーツを修理した感想を話す。ネックはジャケットのウエストを10センチ以上、出す作業だった。ウエストを増やすには背中側の両脇にある縫い目をほどき、内側の生地を出すのが通常の手法。通常2~3センチ程度しか出せず、スーツをつくったテーラーも数センチしか対応できなかった。解決したのは高級ブランド服の修理で知られる心斎橋リフォーム(大阪市)だ。”

“一般的には全体のバランスが崩れる可能性があるため背面中央の「背縫い線」からサイズを詰めたり、出したりするのは禁じ手だ。ただ、同社は独自の型紙研究で背縫い線など通常はいじらない縫い目もほどいて合計5~6センチ出した。さらに内側から取り出した生地を脇の下にはめ込む技術で、12センチ出すのに成功した。ズボンのウエストもタックを減らすなど10センチ以上拡大。全体のバランス調整を含めて上着だけで4万5000円程度かかったが、「思い出はお金に代えられない」。”

“同社は東京・銀座などに7ヶ所の窓口がある。銀座はジャケットのウエスト拡張で月100件以上依頼がある。納期は2ケ月程度。仕事の思い出がある品を持ち込むシニア男性が目立つという。昔のデザインを今風に直す依頼も多い。通常は難しいジーンズ拡張も人気だ。腰回りの裏側から生地を取り、はめ込むなどで4~5センチ増やす。料金は1万1000円程度だ。”

独自の職人技で、これまで難しいとされてきたファッション品の修理を請け負う専門店が増え、特にシニア層の注目を集めている。紳士靴を中心に革靴の甲のシワからできたひびや傷などを補修する珍しい技術を持つ靴修理店が「浅草コブラー」(東京・台東)だ。厚さ0.4ミリの革を上から貼り、ひびを目立たなくする。革の質感やデザインを変えることもあるが、甲の縫い目を外して縫い直すなど極力、元の雰囲気を再現することが特徴だ。原則、靴底交換がセットで、機械縫いによる革底全交換込みで両足で3万2120円からだ。宅配にも対応する。”

「きものトータルクリニック吉本」は一般のクリーニング店が対応しにくい洋服の染み抜き依頼が多い。京都市や東京・青山など6ヶ所に窓口があり、汗や防虫剤のガスで生地の色が変わった「変色染み」にも対応する。和装の染み抜きをする国家資格者「染色技能士」が5人おり、和装ノウハウを洋服に応用する。50~60代女性の客が多く、料金は直径5ミリの変色染みで5000円程度から、納期は1ヶ月程度からだ。”

“体形が変わったシニア女性の支持を集めるのがアトリエロングハウス(東京・渋谷)。創業者が確立した高級注文服のようにピンを打って元のデザインを維持しながら体形に合わせて修正する「モードフィッター」の技術が売りだ。三越銀座店(東京・中央)に予約制店舗がある。増えているのが20代の披露宴で着たドレスを結婚25年の銀婚式で着るためウエストを10~20センチ出す修理。全体のバランス調整とセットで7万円程度かかる。お尻が小さくなり、パンツのウエスト詰めなどシルエットを直す人も多い。

これらのサービスは持ち込む品ごとに状態の差が大きく料金は個別の見積もりが基本。仕上がりが期待と違うことや料金や納期が想定を上回ることもあるので、事前の確認が大切だ。修理による破損などは可能な限り原状回復に応じる店が多いが、購入時の価格や同等品との交換を補償するところはほとんどない。こうした独立系の修理店を利用した形跡があると修理に応じない高級ブランドもあるという。理解のうえで利用したい。”

Follow me!