急増するファスト・ファッション、欧州の衣料品リサイクル事情
2020年2月27日付けNational Geographic電子版に掲載された記事より、
“自分のクローゼットを見て、それを実感する人も多いだろう。2000~2015年まで、世界の人口は2割増えただけだが、衣服の生産量は2倍に増えた。安価な「ファスト・ファッション」が人気を呼んだためだ。価格が安いため、買った服を着る回数は2015年までに平均で3分の1減ったという。その年に世界全体で捨てられた衣料品は、49兆円以上に相当する。”
“古着のリサイクルに取り組む組織、ブール・グループを率いるヨリック・ブールに話を聞いた。オランダ南西部のドルドレヒトを拠点に、ベルギー、フランス、ドイツなど5ヶ所の工場があり、合わせて1日に最大415トンの古着を選別し、リユースとリサイクル用に売っている。工場では、1日に1人当たり約3トンの古着を選別するという。選別作業にはファッションの知識が必要で、特に全体の5~10%を占める最も上質な服を見抜けなければならない。そうした古着が利益の大半をもたらす。”
“現在は収集した古着の6割を販売できている。古着が回収され、着続けられるのは、地球にとって望ましい。服作りに使われた素材やエネルギーが、そのまま受け継がれるからだ。それがブールの収入にもなる。残りの4割、誰も欲しがらない古着は工場などで使われる雑巾としてリサイクルされるか、裁断されて断熱材やマットレスの詰め物に使われ、一部は焼却される。最近安っぽい擦り切れた品物の割合が増えつつある。こうした古着はほぼすべてグループに損失をもたらす。ファスト・ファッションのせいで、事業継続できなくなるかもしれないと、ブールは言う。”
“リサイクル事業のなかでは、それなりの収益を上げている分野もある。ブールは長年、セーターなどウールのニット製品をイタリア北部ブラートの複数の会社に売却してきた。これらの企業は機械を使ってウールをほぐし、長い繊維を回収して、新品に劣らない高品質の再生ウールを衣料品用に供給している。”
“繊維が短い木綿やポリエステルは回収できないため、化学的な処理による再生を目指し、現在数社のベンチャー企業が技術開発に取り組んでいるところだ。EUが、例えば衣料品の2割に再生繊維を使うように義務付ければ、開発に弾みがつくとブールは見る。「10年もすれば実現するでしょう。しないと困ります」”
欧州の衣料品リサイクル事情を取り上げた記事です。色々な素材が組み合わされた衣料品のリサイクルが簡単ではないことは日本と同様ですが、回収された衣料品の6割がリユースされるというのは素晴らしいことです。日本のリユース率は14%程度です。
<衣料品の市場規模とリサイクルの現状>の項を参照
衣料品の消費において重要なことは、「品質の良い製品をできるだけ長く、大切に使うこと」ですが、実際はそのようにはなっておらず、「世界の人口は2割増えただけだが、衣服の生産量は2倍に増えた」とか、「価格が安いため、買った服を着る回数は2015年までに平均で3分の1減ったという」とかいうことが現実のようです。しかも、「最近安っぽい擦り切れた品物の割合が増えつつある」とあるように、低品質でリユースに向かない衣料品が大量に生産され、市場に出回っています。これらは使い道がなく、結局焼却されているのでしょうか。
「再生ウール」の話は興味深いですね。イタリアは高品質なウール生地の産地です。大量生産ではなく、技術と手間をかけてウール生地を生産する工程で、再生ウールを上手に活用しているのだと思います。規模は大きくないかもしれませんが、サステイナブルな素材循環です。このような取り組みを1つずつ積み上げてゆくことが大切なことだと思います。