号外:伊ミラノ、ロックダウン解除後の都市交通計画でCO2排出量削減へ

新型コロナウイルス感染症対策として、欧米各国でロックダウン(都市封鎖)が実施されています。感染症対策が進めば、徐々にロックダウンは解除されることになりますが、ミラノでは、今回の感染症拡大の苦い経験を活かし、都市交通の再構築が検討されています。

2020年4月23日付けSustainable Brand Japanに掲載された記事より、

“新型コロナウイルスは今後の都市交通のあり方も変えそうだ。イタリアの中でも感染拡大が最も深刻とされる北部ロンバルディア州のミラノは、ロックダウンの解除後、主要なショッピングストリートなどの車道を削減し、住民らが少しでも距離を置いて通行できるように歩道・自転車道を試験的に増幅する方針だ。公共交通の混雑を緩和し、移動による感染拡大を押さえる安全策だが、CO2排出量削減も期待される。米ニューヨーク市でも感染拡大防止策として、歩道・自転車道を拡張する法制化が進み始めている。

ミラノの街並み

“英紙ガーディアンは4月21日、「欧州で最も野心的な対策」と新たな「オープン・ストリート計画」を報じた。金融・産業都市ミラノの中でも多くの人が集まるブエノスアイレス通りなど距離にして約35kmで歩道・自転車道が拡張されるという。低コストの仮設自転車レーンや歩行者・自転車優先道の設置、時速30㎞の速度制限などが実施される。人口140万人のうち55%が通勤にバスや地下鉄、トラムなど公共交通機関を利用しており、新計画の実施による感染拡大防止の効果が見込まれる。”

“同市副市長は、「経済活動を再開させたいのはもちろんだが、これまでとは違う前提をもとに進めていくべき。われわれは新しい状況の中で、ミラノを再構築しなければならない。」とポストコロナ感染症の経済活動方針を示し、イタリアが誇る文化を支えるバルやレストラン、職人への支援が重要とした。”

地球温暖化の要因でもあるCO2については、ロックダウン以降、EUの1日あたりの排出量がほぼ60%下がったと英紙フィナンシャルタイムズが報じている。とりわけ、EUの中で最も経済的な打撃を受けているイタリア、フランス、スペインの3か国の排出量の減少率は最大という。イタリア経済のエンジンと称され、経済復興の命運を握るといわれるミラノ。国内でも富裕層の多い地域であり、感染者数が最も多い地域。イタリアでは5月4日からロックダウンが段階的に緩和される予定だが、ミラノはいつ解除されるのか。深刻なコロナ危機を経験している国際都市として、ミラノと拠点を置く企業、住民がどのような未来を描き、経済を立て直すのかに注目が集まる。

日本では4月8日に緊急事態宣言が出され、現在も継続中です(4/28現在)。中国湖北省武漢市は1月25日に都市封鎖され、感染を抑え込んだとの判断で4月8日に封鎖が解除されました。しかし、中国でも再び感染拡大する危険性は払拭されていません。欧米各国、各都市では3月中旬から相次いでロックダウンが実施され、現在も継続中です。人の動きが制限され、経済活動は滞っています。このところ段階的に規制を緩和することが検討されていますが、その判断は非常に難しいものです。少しの油断が感染の再拡大につながりかねないからです。

人類はこれまでにも強力な感染症(天然痘、ペスト、コレラ、新型インフルエンザなど)と戦ってきた歴史を持っています。しかし近年、今回の新型コロナウイルス感染症のように急激に、世界中に感染が拡大した例はありません。グローバルにつながった世界で生活する私たちは、そのリスクを過小評価していたのだと思います。実は、恐ろしい感染症は私たちの身近に潜んでいて、隙あれば襲い掛かってくるということを再認識させられています。

前述のように、ミラノでは感染症後の都市機能を再構築することが検討されています。ミラノだけではなく、世界中の国で、都市で、感染症などの危機を再認識して、生活様式を再構築することが必要です。私たちがグローバルにつながった世界を放棄するのでなければ、自国だけで対応することが困難な事態を想定して準備しなければなりません。新型コロナウイルス感染症という世界的な危機を通して、世界の国々、世界の人々が連携してゆくことの大切さが、改めて問われています。

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