オンワード、コロナが促す「脱リアル店舗」経営
アパレル業界が苦闘しています。大手婦人アパレルであるオンワードホールディングスは、2020年2月期に過去最大の最終赤字を計上しました。消費増税、暖冬、そしてコロナウイルス感染症による影響です。4月7日には「緊急事態宣言」が出され、不要不急の外出自粛に加えて百貨店などの大型店舗の営業自粛が要請されています。百貨店やファッションビルは休業し、繁華街の人出は減少し、消費全般が落ち込んでいます。
2020年4月14日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
“オンワードホールディングスは昨年以降、構造改革に着手し巻き返しを図ってきたが、2020年2月期決算時期に新型コロナウイルスの蔓延に見舞われた。先行きは不透明だが、今回発表した過去最大の最終赤字の本質的な原因はコロナではない。”
“女性向け衣料ブランド「23区」などを展開するオンワードの連結最終損益は521億円の赤字(前期は49億円の黒字)に転落した。消費増税や暖冬に加え、コロナショックも響き営業損益は通期ベースで初の赤字だ。すでに前期に約700店を閉めたが、今期もさらに700店の閉鎖を決めた。2年で半減(大規模閉鎖前の昨年10月比)という異例の合理化に動くのは、構造的な費用負担の重さに悩まされていたからだ。”
“それは販売費及び一般管理費だ。集計可能な1990年2月期以降の売上高に占める販管費の割合を調べると、2020年2月期は46.6%(前期比約2ポイント増)と最も高かった。1990年2月期(約30.6%)比では約16ポイント高い。2008年秋のリーマン・ショック以降は上昇基調にあり、横ばいが続く売上高原価率とは対照的だ。”
“販管費には人件費や運搬費などが含まれる。中でも百貨店向け店舗での費用が大きいとみられる。百貨店向けは中核子会社のオンワード樫山で売上高の約6割を占める主力店舗だからだ。百貨店は強力な集客力を持ち長い間収益を下支えしてきたが、高齢化やインバウンド減少を背景に需要は年々低下。コストに見合う売上高を確保できなくなった。結果、ここ5年の連結全体の売上高営業利益は2%前後にとどまり、同業のパルグループホールディングスやワールド(ともに2018年度で6%前後)より低い。”
“今回、大規模な店舗閉鎖に踏み切るが、これはあくまで止血策にすぎない。コロナ終息後に客足が戻るかは不透明なだけに、高コスト体質の改善には創業以来続けてきた実店舗経営を根本から見直す必要がある。”
“まず電子商取引(EC)拡大だ。ECが進めば人件費や賃料など運転資金を抑えられ、店頭在庫の効率化も見込める。成長に欠かせないのがオンワードの公式通販サイトだけで売るEC限定ブランドだ。2月には働く女性を意識したワンピースやジャケット中心の「アンクレイブ」を立ち上げた。価格は百貨店で売る同ジャンルのブランドより低めに設定、販売は好調という。”
“もう一つは事業の多角化だ。バレエ用品ブランドや生活雑貨、食品分野などを手掛ける「ライフスタイル事業」はアパレル事業が赤字だった前期も15億円程度の利益を確保した。売上高営業利益率は5%強とアパレルの2%強を上回る。”
“同社の自己資本比率は2020年2月末で約38%と、2019年2月末の55%から急低下した。今期は一段と不透明感が増すだけに、余力がある今のうちに多角化を急ぐべきだと指摘されている。重要なことは、大規模な合理化と事業構造の転換の土台作りを今期中に確実に進められるかどうかだ。オンワードの対策の成否はアパレル業界全体が不況の波にどう立ち向かうかの試金石にもなる。”
コロナウイルスの感染拡大が止まらず、その影響の長期化が懸念されています。不要不急の外出自粛が求められ、不安を抱えた消費者は、備蓄できる食料品や不足しそうな日用品をまとめ買いし、不要不急の買い物を控えます。衣料品はまさに不要不急の買い物ですね。みなさんのご家庭でも、クローゼットやタンスに入りきれないほどの衣料品があると思います。アパレル業界の苦闘はしばらく続きそうです。オンワードのような大手でも生き残りをかけてもがいています。消費の傾向(どこで何を買うのか)が変化し、百貨店向けという従来のメイン商流でアパレル販売が大きく復活するのは難しそうです。ECなのか、事業多角化なのか、そう簡単に答えはでないと思いますが、衣料品が私たちにとって必需品であることに変わりはありません。この苦しい時期に、アパレル企業には将来求められる衣料品について、じっくりと考えて欲しいと思います。感染症が収束して、経済が落ち着けば、新しい「ファッション」が求められる時が来ます。環境配慮を意識した素敵なファッションが生まれることを期待したいと思います。