号外:生物多様性から見た新型コロナ・パンデミック①:なぜパンデミックは起こったのか?

下記をご一読ください。なぜ感染症のパンデミックは起こったのでしょうか?地球環境は複雑に連鎖しています。新興感染症が発生した原因は生物多様性を損なう人間に行為であり、経済のグローバル化が感染の拡大、すなわちパンデミック引き起こし、そして加速しているという指摘は、非常に重要で、私たちがしっかりと考えてゆかねばいけないことだと思います。今回のパンデミックは歴史上初めてのことではありませんし、最後でもありません。可能な限り将来のパンデミック・リスクを低減するために、私たちの日々の活動そのもの見直す必要があります。

2020年5月18日付けSustainable Bland Japanに掲載された記事より、

“世界のあり方を一変させてしまった新型コロナ・パンデミック。パンデミックの影響は世界的にまだかなり長引きそうですし、日常のライフスタイルやビジネス慣行も大きく変わらざるを得ないでしょう。私たちはこの先パンデミックを無用に恐れなくてもいいような、サステイナブルかつレジリエントな(回復力のある)社会を創ってゆく必要があるのです。

“新型コロナウイルスがなぜ中国の武漢に現れ、それがここまで急速に世界に広まったのでしょうか。もちろん第一には、航空機の発達で多くの人が世界中を文字通り飛び回っていることがあります。今や世界のどこで発生した感染症であっても、それが世界中に広がるのは時間の問題です。人口密度の高い大都市では、海外との行き来する人が多いこともあり、コロナウイルスは瞬く間に広まってしまいました。感染が広がる様子は、人間の動きの激しさをそのまま反映しているように見えます。

しかし、そもそもなぜこのようなウイルスが突然発生したのでしょうか。現代医学は大いに進歩し、人間は感染症などあまり恐れなくてもよくなったのではなかったでしょうか。現実には、この何十年かの間にも次々に新しい感染症が発生しています。AIDS(後天性免疫不全症候群)、エボラ出血熱、SARS(重症急性呼吸器症候群)などのいわゆる新興感染症です。そしてこれらはいずれも、もともと野生動物の体内に存在していたウイルスが人間に感染することで感染症として知られるようになったもので、人獣共通感染症あるいは動物由来感染症とも呼ばれています。”

“ウイルスは生物に似ていますが、遺伝情報は持つものの自己複製能力がありません。宿主なしには増えることができないのです。ですから、宿主の身体を機能しないほどに弱らせてしまったり、ましてや殺してしまっては元も子もないのです。そうならないよう、ウイルスはうまくバランスを取りながら元の宿主とは共存しているのです。ところが、そのウイルスが人間に感染すると、人間はまだ共存する調整ができていないので、人間は重篤な症状に陥ったり、最悪の場合には死亡してしまうのです。集団中の多くの人がこのウイルスに対して免疫を持つようになれば、ウイルスの爆発的な増殖は防げるようになります。しかし、それにはかなりの時間がかかりますし、その過程で多くの命が奪われてしまいます。今後このウイルスに有効なワクチンが開発されれば、私たちは感染することなく免疫を獲得できるようになります。けれどワクチンが必ず開発できるとの保証はありませんし、できたにしても、かなり長い時間を要するでしょう。”

“今回の新型コロナウイルスは、もともとコウモリやセンザンコウに由来するものであるらしいと言われていますが、これまで長らく自然宿主にだけ感染していたウイルスが、なぜ人間にも感染したのでしょうか。通常であれば人間がコウモリに濃厚接触することはありませんが、武漢を含めた中国南部では野生生物を食べる習慣があるため、人間がコウモリに接する機会も多く、感染の原因になったのではないかと考えられています。今回も武漢華南海鮮卸売市場が発生源という報道もありました。本当の発生源であったかどうかはともかく、そこには多くの野生動物が持ち込まれ、時に驚くような生き物も売っていますし、清潔とはいいがたい状況がしばしば見られます。

もうひとつのルートとして、森林などの生態系が開発され、今まであまり近づくことがなかった場所に人間が容易にアクセスできるようになり、その結果、これまで森の中でひっそりと暮らしていた動物たちと人間が接するようになった。さらには、そうした野生生物の肉(ブッシュミートと呼ばれます)の消費量が増え、その結果ウイルスにも感染しやすくなるという場合があります。AIDSやエボラ出血熱は、まさにこうした例だと言われています。”

いずれの場合も、人間による野生生物の過度の利用や自然破壊、つまり生物多様性を損なう人間の行為が新興感染症の原因となっており、経済のグローバル化が感染の拡大を加速していると言えます。

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