号外:小売りや外食など50社の業績、初の最終赤字に

新型コロナウイルス感染症の影響で、小売りや外食といった消費関連企業が大きな打撃を受けています。4月7日に7都府県で緊急事態宣言が発令されました。4月16日にはそれが全国に拡大され、政府・自治体からの要請によって多くの店舗が休業しました。5月25日には緊急事態宣言が全国で解除され、少しずつ経済活動が再開されています。しかし感染症が収束したわけではなく、感染症と共存しながらの経済活動再開です。4月、5月の最悪期は脱したものの、消費の回復にはまだまだ時間がかかりそうです。また7月になって、新規感染者数が増加する傾向にあり、このままではせっかく回復基調にある消費に、再び水を差す懸念もあります。

2020年7月10日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

小売りや外食といった消費関連企業の業績が、新型コロナウイルス感染症によって大きく悪化した。2020年3月~5月期の決算を終えた50社の最終損益の合計は、比較可能な2008年以降で初の赤字に転落した。経済活動の再開を受けて最悪期は脱しつつあるが、感染症後の生活様式に対応できるかで差も出てくる。”

消費関連企業決算

ユニクロを展開するファーストリテイリングが7月9日に発表した3~5月期決算は、同期間としては初の最終赤字となった。国内店舗は最大で4割が休業、売上収益(国際会計基準)は3364億円と前年同期比で39%減った。最終損益は98億円の赤字(前年同期は446億円の黒字)となり、2020年8月期通期の予想も下方修正した。”

“7月9日午後4時までに業績開示した、2月期と8月期決算企業50社(金融除く)の3~5月期業績を集計したところ、最終損益は345億円の赤字となった。四半期で最終赤字となるのは2008年以降で初めて。前年同期は2000億円超の最終黒字だった。

特に苦戦が目立ったのが衣料関係だ。百貨店や総合スーパー(GMS)を抱えるセブン&アイ・ホールディングスが7月9日発表した3~5月の純利益は、前年同月比73%減の139億円だった。GMSが主力のイオンは四半期として過去最大となる539億円の最終赤字を計上。百貨店も高島屋とJ・フロントリテイリングがともに最終赤字に転落した。”

“感染を懸念して人混みを避け、外出を減らす消費者が増えたことで、外食も厳しい決算だった。ハイデイ日高(中華食堂日高屋)は客数減で売上高が4割落ち、最終赤字となった。壱番屋(Coco壱番屋)も純利益が76%減った。”

在宅勤務が広がり、オフィス街ではコンビニエンスストアの来店客が減った。ローソンが7月9日に発表した3~5月期の最終損益は41億円の赤字(前年同期は71億円の黒字)と9年振りの赤字となった。運営する映画館は休業が続き、チケット販売はイベントがなく売り上げが落ち込んだ。小売りや外食は損益分岐点が高く、売上減が業績悪化につながりやすい。”

“全体が赤字になる中でも、稼ぐ力を見せた企業の1つがニトリホールディングスだ。3~5月期の純利益は255億円と前年同期比で25%増えた。在宅勤務が定着し、机や椅子の販売が増えた。自治体からの休業要請の対象とならず、家族連れなどの来店の受け皿となった面もある。感染予防対策でマスクや消毒液といった衛生用品の需要は急増した。スギホールディングス(スギ薬局)の3~5月の純利益は17%増の61億円となった。ドラッグストアは食料品などの「ついで買い」も取り込んだ。

経済活動の再開が進んだことで、消費関連企業の売上高は改善している。回復度合いは在宅勤務の定着といった感染症後の消費志向の変化をとらえられたかで大きな差がある。消費関連企業の月次売上高は緊急事態宣言が解除された5月に最悪期を脱した。前年同月比の増減率は6月も回復傾向が続いているが、ワークマン(前年同月比37%増)や西松屋チェーン(同34%増)など一気に前年を大きく上回る企業も出始めた。

共通するのは郊外幹線道路沿いの店舗が多い点だ。在宅勤務が定着し、平日・休日問わず自宅周辺で消費するようになっている。一方で都心部の店舗は苦戦が続く。百貨店は前年同月比で5割前後の減少となった4~5月からは回復しているが、銀座や新宿に主力店がある三越伊勢丹ホールディングスは6月も19%減となった。”

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