石川県の繊維企業、傘やマスクをECサイトで直販

北陸3県(福井県、石川県、富山県)は繊維素材産業が集積した地域です。衣料用繊維素材、工業用繊維素材と用途は様々ですが、厳しい経営環境が続いています。各社は自社技術とITを組み合わせた生き残り策を模索しています。

2020年7月30日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

石川県の繊維産業で電子商取引(EC)サイトを開設する動きが広がっている。新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、衣料品などの素材となる生地の需要が落ち込んでいる。同県に集積する繊維企業は加工技術を生かした傘やマスクなどを消費者に直販することで、厳しい経営環境でも収益確保を目指す。”

テックワンの洗える傘

“染色加工のテックワン(石川県能美市)は秋にもECサイトを開設して直販を始める。まず、独自開発した「洗える傘」を発売する。生地を骨組みから外して繰り返し洗濯できる。生地の色は複数色を用意し、気分やファッションに合わせて変えられる。防水・透湿加工技術を活用した枕やフットレストも開発している。水滴を通さない半面、水蒸気を発散させる加工を生地に施して蒸れを防ぐ。同社は、感染症の影響がいつまで続くか分からないなか、生地を卸すだけでなく、最終製品の販売力をつけなければならないとしている。”

“染色加工の小松マテーレは6月、「EC事業推進室」を設置した。同社は医療関係や飲食店のユニフォームを販売するECサイト「ユニリンク」を運営している。ただ、アシックスなど小松マテーレの取引先の商品を中心に販売しており、自社商品は少ない。直販を強化するため、新しいECサイトの立ち上げを視野に入れている。同社は「当社の技術を生かした完成品を直接、お客様に届ける場所が必要」と説明する。光触媒加工をして抗ウイルス効果のあるエコバッグなどの販売を検討している。

新型コロナウイルス感染症の拡大は繊維企業の経営を圧迫している。百貨店など小売店の臨時休業や営業時間短縮で衣料品の売れ行きが鈍ったほか、アパレル企業への対面営業が難しくなったことで受注減も見込まれる。一方、EC市場は拡大している。経済産業省によると、2019年の消費者向けの市場規模は19兆4000億円と前年比8%増えた。このうち衣類・服飾雑貨は1兆9000億円にのぼる。収益確保に向け、アパレル企業など取引先と競合しない範囲で消費者に自社商品を直販する。

“繊維メーカーのカジグループ(金沢市)は7月16日にECサイト「KAJIGROUP ONLINE SHOP」を開設した。7月20日には冷感を得られる肌触りのいい「真夏の夏マスク」の販売を始めた。生地に放熱硬化のある人工鉱石をプリント加工した。同社はすでに旅行雑貨や紳士服など自社ブランドを扱うECサイトを運営している。同社は「マスクを開発しているとき、既存ブランドに当てはまらない商品を販売するサイトが必要と考えた」と説明している。糸の加工から編物、織物まで手掛ける強みを生かし、機能性の高い商品を開発する。

記事にある3社は、いずれも石川県産地の有名企業です。各社それぞれの独自技術を生かした最終製品を開発し、それをECサイトで直販する事業を進めています。これだけインターネットが普及した時代ですから、商品の流通・販売を他社に頼らず、直販することで収益を確保するとともに、最終顧客との直接コンタクトによってダイレクトに顧客意見を入手し、次の商品開発に生かしてゆくことも可能になると思います。

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